読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ときまき!

謎の創作集団による、狂気と混沌の執筆バトル。

第15回短編小説の集い テーマ『過去』の感想

 第15回短編小説の集い、テーマは『過去』

 今回は私も参加したかったのですが、なかなか書く時間が取れず……。

 さておき、参加者さんのご作品読みました! せっかくですので、感想を書いてみようと思います。完全読者目線です。

 また、前回と同じくネタバレ前提で感想を書いていきますので、まだ読んでないよーという人は、先に投稿作品の方をぜひ読んでみてください。

感想

『細胞凍結技術』ではるか未来にタイムスリップしてしまった主人公。いわゆるクライオニクス(人体凍結保存)ですね。時にして2207年。主人公の家族や知人は、みんな死んでしまっています。物悲しい雰囲気が、作品全体に漂っています。

 本作で特筆すべき点は「おせち」がモチーフとして用いられている点です。私はこれを非常に重要視しています。なぜ、人体冷凍保存で未来に辿り着いてしまった主人公のテーマが「おせち」なのだろうかと。たまたま今が12月で、おせちシーズンが近いからではありません。

 あくまで一読者としての感想ですが「おせち」が用いられている点に、私は明確な意図と必然性を感じ取りました。換言すれば「何故これほどまでに、おせちの重箱と、過去―未来の話はしっくり来るのだろうか」と。タイムスリップとおせちが、あまりにも見事にマッチしているのです。読後、ずっとこの違和感について考えていました。そして得たひとつの解釈。

 浦島太郎ですよ! 冒頭で、主人公がおせちの重箱を手にするシーン。まさに浦島太郎が乙姫から託された玉手箱に相当します。竜宮城から戻った浦島太郎の世界は何百年が経過していて、彼はひとりぼっちになった。孤独に耐え切れず浦島太郎は玉手箱を開けますが、彼はたちまちおじいさんになってしまいます。何故、玉手箱を開けたら歳を取るのか。それは箱のなかには「過去」が詰まっていたからです。

 では、本作の主人公が重箱のなかに詰めたものは何だったのか? 一恵が重箱のなかに見たものは、何だったのか?

 以上の点を踏まえて読むと、本作のテーマが「未来」ではなく「過去」でなければならない必然性が見えてきます。(作者さんの意図と別に読解してたらごめんなさい)

 

 ミステリーものですね。ネクタイが事件解決の「鍵」として首尾一貫していたことと、ラストでアクションシーンの盛り上がりがあった点は良かったです。ただ正直なところ、短編小説に詰め込むのはかなり難しいストーリーだったのではないかと……。(私的にはこれは長編小説にしても良いと思います)

 アドバイスとしては、「改行」を意識されると、読みやすさが格段に向上するかと思います。本作では500文字~1000文字で改行が入っています。小説ですと基本的には、200文字前後で改行を入れると文章が読みやすくなります。

 長文ですと、読者はシーンや文章のまとまりをどこで区切ったら良いのか、分からなくなってしまいます。改行を積極的に使うだけで、読みやすさはめちゃくちゃ上がります。

 あと本題とまったく関係ない話で恐縮なのですが、本文のフォントの色はもう少し濃い方が読みやすいです。(文字色が薄くて読めなかったので、Wordにコピペして作品読んでいました)

 はてなブログの「デザイン」→「デザインcss」という項目で

 .entry-content {color:#333333;}

 というような設定をしますと、本文の文字色を濃くできます。#333333の数値(カラーコード)を変更すると、好きな色に変えられます。(小説と関係のない話でほんとにすみません)

 ミステリーとなると、キャラクターもたくさん出てきますし、分かりやすく描き分けをするのはとても大変なことだと思います。(ましてや短編に収めるとなると……)

 ですがさまざまな個性的なキャラが登場するのは、作品の何よりの魅力です。また次回作を楽しみに待っています。

 

 読みやすいリズム感のある文体でした。(特に『ボク』文体の方)

 名前の出てくるキャラクターが10人近く登場するものの『ボク』『シホ』『ケイ』の3人で物語が進行していくため、とくに混乱はなく読み進めていくことができました。

(強いて言えば『ミホ』と『シホ』が似ているのでごっちゃになりそうだったこと。もうひとつは、シホのカレシの『ケンジ』は名前を出さないほうが分かりやすかったかなぁ……ということでしょうか)

 少し引用いたしますと、この部分の文章がやや気になりました。

数日後の夜、カレシであるケンジの家にボクらはいた。いつも皆でいる洋間である。一人がけの赤いソファにはボク、三人掛けにはケンジとシホが座っていた。シホはカレシとその小学生からの親友であるボクに話した。なんでボクなの。

第十五回短編小説の集いに参加します。「private eyes」です。テーマは過去です。 - 池波正太郎をめざして

  シホ→ボクへと、視点が変わる文章の冒頭部分です。

 この最初の段落では『カレシ』が『誰の』彼氏であるのかを読者は読解するのが難しいです。「(シホの)彼氏はケンジである。」と補って読めば済む話ではあるのですが、急に三人称から一人称へ視点が変わっているのも相まって、初読時は読み解くのが難しい。

(ケンジは物語のキーパーソンではないため、シナリオ進行上はまったく差し支えないものの『ケンジ』という名前を出してしまっている以上、読者はケンジを重要人物であると認識します。ケンジの存在がやや読解を難しくしており、いっそのこと『ボク』がシホの彼氏であったならば……とは感じます)

 ボク文体はユーモアがあり、非常に良かったです。ボクは良いキャラをしています。重箱の隅をつつくような指摘をしてしまいましたが、正直なところこれほどの(たくさんのキャラが出てきて、場面転換の多い)話を読ませてしまう文章表現技量には脱帽します。読みやすい文体です。

「オチ」に関しては、私は次のような予想をしていました。

「じつはシホが、私のほんとうの妹なの」

 さすがに……無理がありますかね。短編小説のオチはたしかに難しいです。本作は文章がとても楽しかったです。

 

 即興小説トレーニングの「お題&必須要素&15分縛り」で書かれた作品なのですね。最初、どうして芥川賞ではなくて直木賞の方にしたのだろうと疑問でしたが、その謎は氷解しました。(しかも単に「直木賞」のキーワードを入れるだけでなく、後から「芥川賞」と「ノーベル文学賞」とを絡めることで、縛りワードの直木賞にも必然性を持たせている。流石です)

 やはり大切なのは「必然性」なのだと思います。すべての描写に必然性があり、物語に一貫したテーマがあること。本作は描写に無駄がないです。

 小説を書くのは孤独な作業です。ひとりぼっちです。苦しいです。けれども、決して独りだけで書いているのではない部分もあります。人から人へ継がれゆくもの。過去から未来へ託されるもの。本作の「作家が作家を生み、作品が作品を生む」ように、私たちの紡ぐ小説も、他者と過去とが化学反応してできたドミノ倒しの一貫なのかもしれません。

 

即興小説トレーニングは小説のトレーニングツールで、私も愛用しています。15分縛りでは1作も完結させたことがないです。30分縛りでようやく1作完結。執筆の瞬発力を鍛えるには優れたツールです。おすすめです。

 

(終わり)

 


Copyright (C) 2014-2017 五条ダン All Rights Reserved.