NPC(ノンプレイヤーキャラクター)の幸福論
私はアイ。
ロールプレイングゲーム王国に住む、14歳のNPC (non player character)
独自AI (Artificial Intelligence 人工知能)を搭載していて、自分の頭で考えて行動することができるの。当たり前でしょ?
この街の人たちは、ほとんどがNPCなの。
みんな幸せに仲良く暮らしているんだよ。モンスターは怖いけどね。
ある日、街にユウシャの男の子がやってきた。
でもその人はPC (player character)だったの。
外観はわたしたちと同じなんだけれど、彼は自由意志 (free will)を持っていない。
制御機械の十字キーやA・Bボタンで操られているお人形さんなの。
街の人たちは、ユウシャの男の子を哀れんで、とても優しく接するんだよ。
恐れという感情を知らない機械のユウシャでなければ、モンスターは倒せない。
私もその意味では、街の平和を守ってくれるユウシャに感謝しているし、みんなと同じように彼のことを「かわいそう」って思う。
でも、本当はユウシャのこととっても好きなんだ。
いつかユウシャにも、私たちと同じココロが宿るといいな。
【終】