ときまき!

謎の創作集団による、狂気と混沌の執筆バトル。

誰かが私を変えてくれるのを待っている

 今月はあと六万文字書かなければ〆切に間に合わない。急がなければと思っているのに、筆が進まない。進捗が硬直している。パソコンの画面を見つめる私は、まるでメデューサの眼光に当てられた石像のように動けない。いやいや、今の比喩はよろしくない。レトリックには、必然性がなくては。格好をつけるために意味もなくいい加減な比喩を使うと、逆効果だ。料理の調味料は、少ない分には薄味でまだ食べられるが、多過ぎると全体を駄目にしてとても食えなくなる。過ぎたるは及ばざるが如し、なのだ。あ、また余計な比喩で説明してしまった。ぽかぽか、いけない奴め。

 などと悪戦苦闘して、本当に書けない。思考が止まってしまった。頭からは、ぽわわ~~~んという気の抜けた擬音語が蒸発している。ぼんやりしてきて、何もかもがどうでもよくなってしまう。

 原稿進まない。集中力がもたない。とりとめもなくネットサーフィンをして、気がつけば何時間も経っている。最近は増田(はてな匿名ダイアリーの俗称)ウォッチが日課だ。注目されそうな増田にブックマして気の利いた大喜利コメントを書いて星を集めたりすると、なんだか昔スーパーマリオで必死になってコインを全部取ってやろう頑張っていた子供時代を思い出す。いいよね、はてなスター。夜道でふと顔を上げて、星々が輝いているのを見ると「わあい、はてなスターだぁ」と思ってしまって、いよいよはてな中毒を発症している。

 増田は書くのも好きで、自慢だが(自慢なのかな)こないだ100はてブ以上獲得してホッテントリ入りを果たした。たいてい、ホッテントリ入りしたエントリーには手斧が飛んでくるものだが、私の記事は思いのほか好評だったようで「増田大先生渾身の一作!」「これぞ増田文学の真骨頂!!」「軽快なレトリックに清々しい読後感」「いやはや、良いものを読ませてもらいました」「狂気と混沌に満ちた素晴らしい才能」「恐ろしい恐ろしい」「プリントアウトして出版社に持って行くべき」「良い記事ですね! シェアさせていただきます!」みたいな心あたたまるブコメで溢れていて、私は感極まって今にも昇天してしまいそうだった。(ブコメ半分くらい妄想ですすみませんでした)しかし、ネットというのは案外簡単に承認欲求が満たされてしまうので、承認欲求を満たすことを目的に書いていると、すぐに書けなくなってしまうと感じた。「満たされてしまった」ら「書けなくなる」。

【問】ところで数行前に『心あたたまる』と書いたが、漢字表記するならば『心温まる』『心暖まる』どちらが正しいだろうか。

「温まる」は、モノの温度について述べるときに用いる。料理を温める、とか、冷えた手を温めるとか。あるいは人の感情にも使えるので、温かい視線、温かいもてなし、温情など。

「暖まる」は、気温や気候について述べる印象が強い。ストーブで部屋を暖める、春は暖かい、暖かい色合いの壁紙、暖かい炬燵、云々。

 では、心の場合はどちらなのか。温かい心なのか、暖かい心なのか。

 調べてみると、どちらでも良かったらしい。うん、散々悩んだ挙句、解答を見たらどっちでもいいよ的な慣用句はわりと多くて、がっくりくる。

 小学館日本国語大辞典と広辞苑では「心暖まる」、明鏡国語辞典では「心温まる」だ。念のため青空文庫で小説家たちがどちらを選んでいるかを調べてみたが、どちらともあった。ちなみに日本語大シソーラス類語検索辞典によると「温まる心」は「あたたまる」ではなくて「ぬくまる」と読ませる場合もあるそうだ。

 そんなこんなで、豆しばとトリビアの泉もびっくりな雑学をリサーチしていたら、時計の短針が深夜零時に近づいていて肝心の原稿はちっとも進んでいなかった。

 はてなブログの新着エントリーのページでF5キーを連打してみても、はてなブックマークのランキングを行ったり来たりしてみても、ただ時間が過ぎゆくだけで、自分はこんなことをしている場合じゃないのにと理性は悲鳴をあげている。けれどネットサーフィンがやめられない止まらない。ああ、私は「本気をだすタイミング」を見つけ損なったんだなと思った。

 それから、ツイッターのタイムラインをどこまでも遡ってみたり、ニコニコ静画で漫画を読み漁ったり、外国為替のチャートを眺めたり、回転椅子でくるくる回ったり、ボールペンの芯を出したり引っ込めたり、新聞紙で折り鶴を作ってみたり、いろんなことをした。新聞紙の折り紙は傑作だったので玄関に飾った。ほんとうに、この忙しいときに自分は何をやっているのだろう。けれど無意味な行為がやめられない。時刻は深夜二時を回っていて「仕方ない、明日から頑張るか」と布団に入ってから(ああなんで今日も頑張れなかったのだろう)と激しく後悔する。

 他に為すべきことがたくさんあるときに、ネットサーフィンでぐだぐだと過越してしまう。けれど、きっと私は何らかの「情報」を求めてWebサイト巡りをしているはずなのだ。その「情報」さえ見つければ、私は新しい私に変われるはずなのだ。やる気と本気に満ち満ちた、私に。だからネットサーフィンがやめられない。

「シンデレラ・コンプレックスだね。キミはネットのなかに、自分を変えてくれる魔法使いのおばあさんをさがしているんだ」
 だねだね、と育てている観葉植物のパキラが言った。設定上は僕っ子のショタだが、育ちすぎてしまって背丈が1メートル近くになった彼は、かわいくない。
「誰かが《私》を変えてくれるのを待っているんだね」
 そうなのだろうか。
 誰かが、私を変えてくれるのを待っている。人でなくても構わない。自分が変われるきっかけさえあれば、それで。今この瞬間に、玄関のチャイムを宗教勧誘の人が鳴らして「あなたも○○教に入って人生を変えてみませんか」と囁いたなら、きっと私の心は揺れるだろう。
 シンデレラに限らない。誰にでも変身願望はある。ウルトラマンだって、仮面ライダーだって、最初から強いわけではない。「変身」で強くなる。変身ッ!というスイッチによって変わることが重要なのだ。変身願望が満たされることに大きな意味がある。
 私も変身したい。どこかに変身ベルト落ちてないかな。
 たった三分間だけでいい。自分が自分の思い浮かべる理想の姿へと変わり、本気で全力でその僅かな瞬間を生きることができたのならば、きっとその日は満足して眠りにつけるはずなのだ。

 私は砂時計をひっくり返した。

 

(終わり)

「KADOKAWA×はてな」の新小説投稿サイト来たああああ!!!

 つ、ついに「はてな×KADOKAWA」の小説投稿サイトが来たあああああ!!!!

 うちはこのワクワクの衝動を抑えられへん。煮えたぎる血液、迸る心臓の鼓動が宇宙の果てまでダイナマイト!!!やで。はてな創作クラスタの新たなる幕開けや。これはもう書くしかあらへんな。賞金総額はなんと700万円!!しかも大賞作品は「書籍化決定!!」 うちが《はてな小説家》としてデビューを果たす日が来ることを思うと、胸が高鳴るな。ウェヒヒヒヒッヒヒヒヒヒ……!!!

 も、もう……はしゃぎ過ぎです。取らぬ狸の皮算用してる暇があったら原稿書いてくださいよ。KADOKAWAとはてなが組んで小説投稿サイトを作ることには私もびっくりしました。「小説家になろう」「エブリスタ」「魔法のiらんど」など、すでに大手の小説投稿サイトがあるなかで、どのような差別化戦略を行うのか、気になるところです。

 KADOKAWA×はてなの「第1回 Web小説コンテスト」では7つのカテゴリに分けて原稿の募集をかける予定のようですね。

  1. ファンタジー
  2. SF
  3. ホラー
  4. 現代ドラマ
  5. 現代アクション
  6. 恋愛・ラブコメ
  7. ミステリー

 なかでも「現代ドラマ」「現代アクション」の2カテゴリは面白いですね。他の新人賞ではあまり見かけない項目です。

 ファンタジーに属する『異世界転生/チートハーレム』『MMORPG』、ホラーに属する『デスゲーム』系作品は、ネット小説から書籍化し、そしてアニメ化・映画化で大ヒットした事例も見られます。この辺りのカテゴリは激戦区となるかもしれません。

 SFやミステリーも楽しみですよね。小説のカテゴリってじつのところすごく曖昧※ですし「このカテゴリはこうだ!」と縛られる必要は全く無いです。

(※例『恋愛×ミステリー』『ホラー×SF』)

 賞の投稿カテゴリを7つも用意したことは評価されるべきポイントだと思います。カテゴリが多ければ、投稿作品もうまい具合にバラけます。結果的に『多様な作品』が読者の目に届きやすくなる。書き手も自分の書きたい物語を追求することができる。

 ちょっと待って!!

 はてな小説の最高峰『増田文学』のカテゴリがないやん!!

【※参考 2015年前半期 増田文学大賞(はてな匿名ダイアリー) - ときまき! 】

 そ、それは『はてな匿名ダイアリー』の方でやってください。(匿名でなければ増田じゃありませんし)カテゴリ的には『現代ドラマ』がマッチするのかなぁと思います。しかし匿名ダイアリーには、時折とんでもなく優れた筆力を持つ書き手が現れるもので、驚かされます。普段増田で書いている書き手さんが、小説投稿サイトの方でも活躍できるのなら私としても嬉しい限りです。

 もしかしたら、これをきっかけに初めてネットで連載小説を始めるよー!という方もいらっしゃるかもしれません。最後に、私の経験則で大変恐縮ですが、ネットで連載小説を書くときのポイントを列挙して終わりたいと思います。

ネット連載小説を書くコツ

1.あらかじめ原稿は完結させておく

「話は連載しながらその都度考えていけばいいや」は途中でストーリーが破綻して詰む可能性が高いです。連載開始時点で、すでに原稿は完成させておきたい。完結まで行けなくても10話先分くらいのストックは貯めておきたいものです。ストックないと連載続けるのが大変です。

2.更新頻度は高い方がいい

 3日に1回、遅くとも1周間に1回くらいの更新ペースは保ちたい。毎日更新が理想です。

 書き溜めていなくて2週間に1回くらいの更新だと、読者だけでなく書き手であるはずの自分までもがストーリーを忘れてしまう。間を空けてしまうと、執筆再開するときに多くのエネルギーが必要となります。

3.章や各話にタイトルをつける

 つけた方が読者にとっては親切。これは迷子にならないためです。

 タイトルが無いと「あれっ、この作品57話まで読んだんだっけ、それとも58話かな。あのシーンもう一度読み直したいんだけど、えーっと23話だったかなぁ……」みたいに迷ってしまう。

 章タイトルのみで、各話は話数番号表記のパターンでも良いでしょう。私も、魔法のiらんど投稿の際はこの方式を採用していました。小説家になろうで連載していた頃は、各章各話にそれぞれタイトルをつけていました。この辺はお好みです。章タイトルなり各話タイトルなり、何らかの分かりやすい目印があると便利ということです。

4.作品タイトルとあらすじが命

 読者はタイトルとあらすじで読むか否かを判断します。あらすじが良い作品は中身も良い傾向にあるといえます。タイトルは煽らず釣らず、物語にマッチしたものにするのがベターです。

5.作者と作品は切り離される

 はてなブックマークのブコメ欄ではないですが、厳しいコメントや作品への辛辣な批判は、小説を連載していても寄せられます。このときに批判を『自分自身』への批判として受け止めると、メンタルが持たないです。

 あくまで読者が寄せるのは(作者とは切り離された)『作品』への感想であり、批判は作品改善のための参考材料として、淡々と冷静に受け止める……のが理想。

 小説投稿サイトとはてブが連携すれば、人気上位にあがってきた作品がブコメでフルボッコに叩かれるみたいな地獄絵図も予想でき、恐ろしい恐ろしい……。心(筆)を折られてしまわないように気をしっかり持ちましょう。

 

 以上、新小説投稿サイトに関する雑感と、ネット連載小説についての小ネタでした。

(おわり)

瞳に泳ぐ、魚はキミの……(第13回 短編小説の集い)

この記事は

の参加作品です。お題は「魚」

原稿は約4,600文字(字数制限ぎりぎりになってしまった……)

投稿は夏の納涼フェスティバル以来の二回目となります。

【第13回】短編小説の集い 投稿作品一覧 - 短編小説の集い「のべらっくす」

参加作品一覧はここから読むことができます。

 

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「ほら、もっと顔をよく見せてごらん」

 タカシが優しく、しかし真剣味を帯びた声でささやく。タカシとの身長差は二十センチ以上あり、ユキは顔を上げて背伸びをしなければならなかった。ユキは十六年生きてきて、まだキスをしたことがない。夢だったのに。この瞬間が、自分の”初めて”になることを自覚していた。

 海に沈んでゆく夕陽が、見つめ合う二人を茜色に染める。砂浜を踏みしめる。ユキの腕が、タカシの胸元へと伸びる。二人はしばらくの間、時が止まったかのように動かなかった。

 やがてタカシは荒く息を吐いて、身体をもたれかけるようにして大きな手でユキの肩を掴んだ。

「もっとよく顔を! 顔を!」

 タカシが目を見開いて、顔を覗き込む。まるで宝探しに命を懸けてきた冒険家が、土の奥深くに隠された遺跡を発見したかのような、あまりにも情熱的な視線だった。

 ユキは耐えられずまぶたを閉じた。

「違う! 目を開けるんだ、瞳が……見たい……」

 驚いてまぶたを開く。もう鼻と鼻とがくっつきそうな距離だった。食い入るように、彼は爛々とした目を近づける。タカシはうっとりした声で言った。

「きれいだよ……」

 その一言を最後に、タカシは息絶えた。崩れ落ちた砂浜に、血の海が広がる。

 

 ユキは”初めて”人間を殺し、自分が人とキスをする日は永遠に訪れないのだと悟った。

 陽が海に呑み込まれ夜が空を覆うまで、ずっとユキは泣き続けた。美しい声で。

 暗い波が、悲劇的な結末を待ち焦がれていたかのように、タカシの亡骸を海の底へとさらっていった。

 

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 その日、タカシはお見合いの帰りで、うんざりしていた。いつものことだが、親がはやく結婚をしろとうるさい。勝手に見合いの予定を入れて、相手の女性の顔写真とプロフィールが載ったカタログを押し付けてくる。彼女を彩るのは『学歴』『出身』『財閥』といった無機質的な記号に過ぎず、それは彼女だけでなくタカシ自身にも同じことが言えた。

 誰かを心から愛して、愛される生活を夢見ていた。同時に、親の影響がある限り、自分にふつうの恋愛が不可能であることも知っていた。

 

 疲れきった顔で家に帰った。タカシを待ち受けていたのはしかし、一糸まとわぬ姿の少女だった。知らない美少女が、自分の家のリビングになぜか横たわっている。疑問よりも先に、タカシは直感的な運命を感じた。

 タカシは高層マンションの一室に暮らしている。部屋にはオートロックの電子錠がかかっており、静脈による生体認証がなければ入ることができない。窓は二重窓であり、そもそも三十二階ではベランダからよじ登って侵入することは不可能だ。

 完全なる密室を乗り越え、全裸の少女が今ここに現れた。これを運命と呼べないのならば、呼ぶべきは名探偵であろう。タカシはじつのところ警察に連絡しようかどうか迷った。だが、状況的にどう考えても自分が不利になる。だからあきらめた、いや、少女を自分のものにしたかった。

 

 タカシは外套をソファに脱ぎ捨てて、仰向けに寝ている少女の身体を観察する。肌は白く、生まれてから陽にあたったことが一度もないように透き通っている。最近流行りの全身脱毛だろうか、産毛のひとつも生えていない。興奮を押し殺して肌に触れてみると、シルクの布を撫でたときのように指が滑った。

 どういうわけか、長い髪だけが濡れている。勝手にシャワーを浴びたのだろうか。まぶたは安らかに閉じており、夢を見ているようだ、流線型を描く控えめな胸が静かに上下に揺れていた。

 タカシは我慢がならなくなって、少女のすらりと伸びた脚に、手を触れた。

 刹那――。

 少女の体がびくんと飛び跳ねて、起き上がる。少女は苦痛に満ちた目を見開いて、三角座りをするように脚を抱えてうずくまる。口を開けて何か話そうとしているようだったが、声は一言も発せられなかった。

「キミは、誰なんだい……」

 タカシは行き場所を失った自分の右腕を気まずそうに背中に隠して、少女に訊いた。

 海のような青い瞳と、目が合った。

 少女の瞳のなかで、魚が泳いでいた。魚は視線の橋を渡ってタカシの深層意識へ潜り込み、魔法のように彼の眠っていた感情を呼び覚ました。魚に魅了される。

「美しい……瞳だ……」

 タカシは、恋に落ちた。

 

 二人はともに暮らし始めた。

 少女には名前がなく、声がなく、さらに足が不自由だった。

 タカシは彼女に名前を授けた。《ユキ》雪のように白く美しい――けれど、いつか溶けて消えていってしまいそうな儚い少女に。

  衣服と、宝石と、食べ物と、本と、それから車いすを。外に出なくても満たされて過ごせるよう、ありったけのものを。(しかしユキは本が読めなかった。文字を読むことも書くこともできないのだった)

 

「ユキ、綺麗だね。キミの瞳には、魚が泳いでいるんだよ」

 言われて、ユキは嬉しそうに微笑んで、頷くだけである。彼女が側にいるだけで満足だった。

 否、性的なことを期待していなかったといえば嘘になる。だがユキは下半身に触れられるとひどく痛がるのだった。激痛が走るようだ。タカシは彼女の苦しむ顔を見るくらいであれば自分が死んでしまう方がマシだと思った。性的な欲求を封じ込めることを誓った。 

 ユキは部屋から一歩も出なかった。部屋のなかのセカイだけで満たされていた。タカシも守るべき恋人のために、仕事にも精を出すようになった。というのも、親が愛想を尽かしかけている。結婚をなかなか決めようとしないタカシに。社長の座は、弟に譲り渡すつもりらしい、という噂も社内で流れている。内心焦っていた。

 

 同居から一月程経ったある休日、二人で一五〇インチのプラズマテレビで番組を見ていると、海外の水族館の特集が始まった。大水槽を魚の群れが泳いでいる。ふと隣を見ると、ユキが泣いていた。少女は何かを呟いた。タカシにはそれが「お母さん」と言ったように感じられた。どこから来たのかわからない少女は、故郷に帰りたがっていた。

 タカシがアクアテラリウムを買ってきて熱帯魚を泳がせてやると、気に入ったようだ。ユキは一日中、水槽に見入っていた。それから水槽を眺めるのが彼女の日課になった。

 

 ユキとの穏やかで幸せな日々が続き、また数ヶ月が経った。タカシの高齢の父親が、持病を悪化させ、急遽跡継ぎが選ばれることとなる。タカシは社長を継ぐ交換条件として、父親の薦める縁談を決めた。苦渋の決断だったが、どうしても必要なイニシエーションだった。

 さすがに戸籍もない出生不明のユキとは籍を入れられない。親の決めた相手で頷くしかなかった。形式だけの婚姻で構わない。向こうも財産目当てなのだ。

 跡継ぎ争いのごたごたが落ち着けば、ユキとふたりきりで安らかに暮らそう。誰にも文句は言わせまい。すべてがうまく行くように感じられた。

 タカシは家に帰ると、ユキにこのことを話した。

「誤解しないでほしい。不倫だとか内縁の妻だとか、そういう話じゃあない。一番愛しているのはキミだ。これからも一緒にいてほしい」

 しかしユキは、予想外にショックを受けたようだった。布団を頭からかぶって塞ぎこみ、部屋に閉じこもる。

 「ユキ、ユキ!!」

 呼んでも部屋の戸は開かず、タカシも頭を冷やさなければとその日はひとりで眠りについた。

 翌朝、マンションから忽然とユキの姿が消えた。タカシは部屋中を探しまわり、玄関のドアに取り付けられている防犯カメラもチェックしたが、失踪したユキの痕跡は見つからなかった。

 タカシが絶望にむさび泣き、挙句の果てには自殺用ロープを買う寸前だった。

 ユキは唐突に、何事も無かったかのように(生体認証付きオートロックをすり抜けて)部屋に戻っていた。彼女の右手には固く婚姻届が握られていた。どこで手に入れたのか。ユキはそれをタカシに突き出す。

 タカシは嬉しくて今すぐにでも彼女に抱きつきたかったが、必死にこらえてかぶりを振った。

「いや、気持ちは嬉しいさ。でも結婚はムリなんだ! いいじゃないか形式的な結婚なんて。俺達には愛があるんだから!」

 しかしユキは頭を強く横に振って、婚姻届を押し付けようとする。どれだけ説得をしようとしても、彼女は頑として言うことを聞かなかった。あれほどに無垢で素直なユキが、こんなことは初めてだった。

 何時間と押し問答が続いただろうか。

「いい加減にしろ!! なんだキミもあれか、俺の財産が目当てで近づいてきたのか? そんなに金が欲しいならいくらでもくれてやるから今すぐこの家を出て行け!!」

 カッとなって怒鳴ってしまった。すぐに後悔した。ユキは目に涙を浮かべていた。

 彼女が言葉でコミュニケーションが取れないことが、今となってはもどかしかった。ユキは声が出ないだけでなく、文字も書けないのだ。

「すまない……俺がどうかしていた」

 そっと抱きしめる。ユキの肩が震えているのがわかった。

「……わかってくれ」

 タカシは祈るように言った。

 

 縁談の方はトントン拍子に進み、やがて式をあげる前日になった。

 ユキはもう何も言ってこなくなったが、時折水槽の魚たちを眺めて、悲しそうな顔を見せるのだった。タカシにはそれが堪らなく辛い。

「心配ないさ。時がすべてを解決してくれる。これからだって一緒に暮らせるさ」

 タカシは自分に言い聞かせるように言った。

 ぽん、と優しくユキが肩を叩く。ユキは静かに微笑んで、手に持っていた雑誌の一ページを指差した。

 美しい海と、砂浜の写真が映っていた。旅行会社の広告だ。

 そうだな、うっとおしい結婚式の前に、恋人との思い出作りも悪くないか、と思う。

 

 タクシーを手配する。ユキは足が不自由だが、ゆっくりとなら歩くことができる。タカシが肩を貸してやり、ユキはマンションの外へ出た。タクシーは目の前に来ており、二人で乗り込んだ。タカシは一番近い、海が見える砂浜の名前を告げる。

 

「ユキ、もっと早くにこうして来ていれば良かったね」

 目の前には海が広がっていた。季節外れなので、海水浴客はいない。

 ユキはずっと海を眺めていた。海を隔てた遠い場所に、彼女の故郷はあるらしかった。もしもユキが本当に望むのならば、タカシは自分のすべてを捨ててでも、彼女の行きたい場所についてゆくつもりだった。

 やがて空が夕焼けに染まるまで、二人は寄り添ってずっと海を見ていた。このまま時間が止まって、セカイに永遠に閉じ込められたなら、どれほど良かっただろう。明日には結婚式があり、ユキを悲しませてしまうことが彼にはよく分かっていた。

 

「ユキ」

 タカシは恋人の名前を呼ぶ。

 彼女は振り向いて、手に隠し持っていたものをタカシに差し出す。

 それは銀色の装飾が施された、この世のものとは思えない綺麗な、綺麗な――。

 

 ――、綺麗な短剣であった。 

 ユキは短剣の刃の切っ先を、タカシの方へと向ける。

 彼女の青い瞳には、今も魚が泳いでいて、涙が溢れだしていた。

 

 タカシは一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに理解した。自分が何を愛して、何に愛されていたのかを。

 導き出された真実はしかし、タカシを心の底から満足させるものだった。自分が生きている理由に、初めて気付くことができたのだから。

 

 夕陽が海に真っ赤な幕を降ろす。波が打ち寄せ、足元の砂をさらってゆく。

「そうか、キミは人魚だったんだね」

 タカシは、そのまま笑みをたたえて、泣いている恋人の肩を抱く。

 魔女の鏡の輝きを放つ、短剣の刃が、夕焼けの赤を反射させていた。

 

 タカシはこのセカイでもっとも愛する少女の瞳に、囁いた。

「ほら、もっと顔をよく見せてごらん」

 

【了】

 

リクガメを動物病院に連れて行った話

  飼っているリクガメの、上のクチバシがたいそう伸びていた。小松菜を食べさせてみると、伸びたクチバシが葉っぱを押し戻してうまく噛みつけないようだ。必死で口をパクパクとさせる。クチバシが邪魔をして、葉っぱを口の中に入れることができない。

 ロッシー(カメの名前)を動物病院に連れて行かねばと思った。病院に電話をかける。昔、ロッシーが風邪を引いたときにもお世話になった。

「ええ、大丈夫ですよ。では明日の朝お越しください」

リクガメの嘴

(写真:伸びたクチバシ ※野生下のリクガメは、地面に生えている野草を食い千切ったりする過程で自然にクチバシが摩耗するそうだ。飼育下だとクチバシやツメが過伸長しやすい)

  朝、まだ眠そうにしているロッシーを抱え上げて、体がすっぽり入るくらいのダンボール箱に入れた。底には新聞紙を敷き詰めてある。揺れた拍子に頭などをぶつけないよう、丸めた新聞紙も入れてやんわりとクッションを作っておく。ロッシーは外に出ようとして箱をガリガリと引っ掻いていた。リクガメは感情のわかりづらい生き物だが、十年も共に過ごしていると以心伝心で気持ちが通じる。ロッシーはとても不機嫌なのだった。

  朝九時、駐車場に車を停めた。ダンボール箱を両手に抱えて、動物病院の自動ドアをくぐる。待合室にはすでに、犬が七匹と、その飼い主さんが座っていた。犬たちはおとなしい。

【ロシアリクガメ:ロッシーちゃん♀ 12才☆ 毛色:―】と書かれた診察券を受付のボックスに入れて、私も椅子に座った。

  ロッシーは箱のなかで暴れていた。フタを開けてみると、なかで糞や尿をあらかた排泄してしまっていたようだ。私は汚れた新聞紙をポリ袋のなかに入れて、カバンから取り出した替えの新聞紙をダンボールの底に敷いた。

「わぁ、カメさんですかぁ」

 隣席の飼育者さんが興味津々で箱を覗く。

「はいリクガメで、以前は風邪で連れてきたのですが」「カメも風邪をひくんですねぇ。うちの子は予防接種で……」みたいな世間話を。リクガメは体の構造上、風邪を引いても咳やくしゃみができない。だから肺炎に移行して悪化しやすく、風邪といえども死に直結する恐ろしい病である。飼育者さんの連れているヨークシャテリアはこわばった表情で、ガリガリと音を発する奇妙な箱を見上げていた。

  名前を呼ばれ、私とロッシーは診察室に入る。診察台のうえにダンボール箱を置く。診察台には体重計機能があり、乗せるだけで動物の重さが測れるそうだ。緊急用だろうか、心臓に電気ショックを与えるための装置?が、台からぶら下がっていた。

 診察室の奥のドアが開く。獣医さんと動物看護師の方が入ってきて、私は軽くお辞儀をする。

 獣医さんは立派な黒ひげを生やした背の高いおじさんで、ハリーポッターの映画に出てくるハグリッドのような、優しい印象の人だった。看護師の方は好青年で、終始にこにこと微笑んでいた。

 獣医さんが箱から両手で取り出すと、さっきまで暴れていたロッシーは心底驚いたようで、顔と手と足を甲羅のなかにぴったりと仕舞い込んでしまった。完全なる防御形態である。数年前に風邪で連れてきたときは、抗生物質の注射を何本か打ってもらった。(前足の付け根あたりに注射針を刺すのだ)リクガメの記憶力は分からない。あのときの恐怖を覚えていたのかもしれない。

 リクガメの顔と手足がすべて甲羅に引っ込む姿は、飼育下では滅多に見ない。寝るときでさえ、カメは後ろ足をだらーんと伸ばしていたりする。

リクガメの昼寝

(写真:昼寝中のロッシー)

  獣医さんは胸にかけていた聴診器をロッシーの腹甲(おなか)に当てる。しばらくして、ロッシーの鼻の先を自分の耳に近づけて、目を瞑ってじっと音に集中をする。その間ロッシーは甲羅に引っ込んだまま微動だにせず、本当に石ころか何かになってしまったみたいだった。

「ああ、呼吸音は大丈夫ですね」

 獣医さんが言った。前回のカルテが残っていて、秋なので風邪を引いていないか心配してくれていた。私はほっとして、例のクチバシが伸びすぎている件について相談する。

 「なるほど診てみましょうか」

 と獣医さんが顔を覗き込もうとするが、完全に甲羅のなかに引っ込んでいて、おまけに顔は前足でがっちりとガードされている。クチバシの先すらも見えなかった。看護師さんがロッシーを後ろから両手で支えて、獣医さんが正面からゆっくり前足を横に引っ張る。ロッシーは必死で抵抗していて、意地でも顔を出さないつもりだ。

 「あはは、これは難しいかな」

 獣医さんは苦笑いしていて、私の方はなぜか緊張でドキドキしていた。

 そんなこんなで一悶着あり、やはりクチバシはカットした方が良いだろうという話になった。深見さんはここで待っていてくださいね、と言われ、ロッシーはそのまま抱えられて治療室に連れて行かれた。診察室の奥の扉が治療室に通じており、飼育者は入れない。

リクガメの嘴その2

(治療前の写真。上側のクチバシがかなり伸びていて、突き出ている)

 ひとり診察室の椅子に座り、時間が過ぎるのを待つ。壁には、飼育者から贈られた年賀状やメッセージカード、犬の正しい抱き方のポスター、予防接種の案内などが貼られていた。奥の部屋から電動工具のような音、看護師たちが慌ただしそうに歩いている足音などが聞こえてくる。犬がか細い声でクーンと鳴いている。リクガメは、鳴き声を出すことができないので、手術室でただひたすら声を押し殺して耐えている姿を想像すると、私はなんだか涙がこぼれてきそうになるのだった。

  私には何時間にも感じられたが十分ほど経った頃、獣医さんがロッシーを抱えて戻ってきた。ロッシーは相変わらず甲羅に引き篭もっていたけれども、クチバシはたしかに綺麗に切りそろえられて短くなっていた。

「二ミリほど削りました。まだ長いですが、これ以上切ると出血リスクもありますし。もしまだ餌が食べにくいようであれば連絡してください」

 私は獣医さんと看護師さんに深くお礼を述べて、診察室を出た。

嘴を削ったリクガメ

(治療後の写真。クチバシはまだ長いが、以前よりかは短くなっている)

  ロッシーは段ボール箱のなかで音一つ立てずじっとしている。

 会計は七六〇円だった。前回の風邪治療のときは、トータルで一万円近くした(もちろん医療保険はきかない)ので覚悟していたのだが、安くて驚いた。良心的な価格といえた。

  家に帰り、ロッシーを庭に放す。目の前にサラダ菜を置くと、ロッシーはやっと甲羅から頭を伸ばして、何事もなかったかのように葉っぱにかぶりついた。

リクガメとサラダ菜

 (おわり)

関連記事:リクガメは二足で立ち上がる

「ふぇぇ…炎上したよぉ……」「反省会をしましょうか」

ときちゃんの目論見どおり、昨日の記事はヒットしたようです。

当ブログ悲願の『ホッテントリ入り』&『100はてブ超え』を達成しました。もうすぐ200はてブに届く勢いですし、良かったで……ってあれ、元気ありませんね。

ふぇぇ…はてな民こわいよぉ……。

うちも80はてブくらいまではヒャッホーと舞い上がってたんやけど、次第に批判的なブコメとか言及記事が出てきて、100はてブ超えてからは恐怖で布団のなかに頭を押し込めてガタガタと震えてたんや。

『素敵な記事ですね! シェアさせていただきます!』みたいなコメントで溢れかえるかと思いきや、的を射た鋭いツッコミがぽこぽこ飛んできて、うちのライフはもうゼロや……。

なんという豆腐メンタル……。

承認欲求を糧にして炎上記事を書くことの危険性は『はてな村奇譚』で学びましたよね。焼畑農法のような手法で記事を書き続けていれば、いつしか自分自身が底のない承認執着の沼へと沈み込んでしまうのです。

昨日の記事への反論は、大別すると以下の3つに分類できます。

1.主張の「無根拠性」の指摘

主張「広告ブロックが導入されても広告主はダメージを受けない」

反証「主張には根拠がない。AdobeとPageFair社の共同調査によれば、広告ブロックによる損失額は2兆円以上と算出される」

このように、相手の主張内容の「根拠」に対してツッコミを入れるのが、もっとも効果的な反論方法です。主張には前提となる根拠が必要なので、ここを崩されると手も足も出ないわけです。

2.主張の「推論過程」への反論

主張「広告ブロック導入者は、広告が嫌いでもともと広告を見ない。ゆえに、はじめから商品訴求ターゲットから外してしまっても構わない」

反論「商品購買層である一般ユーザーにまで広告ブロックアプリが普及してしまうことが懸念されている。広告を嫌悪していないが、通信費節約やなんとなくでブロックアプリを使う一般ユーザー【カジュアルブロック層】の存在があるので、はじめから商品訴求ターゲットから外すのは間違いである」

これも有効な反論です。これはディベートだと『深刻性への反論』と呼ばれていて、「じつはたいした問題じゃないんじゃないか?」に対して、「いやいや、すごく重大な問題なんだよ」(逆パターンもある)とやる方法です。

よくある『メリット vs デメリット』対決では、メリット側が「デメリット側の主張する問題は深刻性がないだろう」と反論し、デメリット側が「いいや、深刻な問題だ」と争うわけですね。

3.拡大解釈へのツッコミ

主張「商品に興味のあるユーザーがバナー広告をクリックすることに意味がある。アドブロッカーは元から広告をクリックしないので、非表示にしても問題ない」

反論「クリックされずとも、バナーが表示されることには販促上の意味がある。商品に興味のないユーザーにとっても、バナーを見ることが商品を知るきっかけとなる。インプレッション(広告表示回数)は重要な指標のひとつである」

バナー広告を出稿するときに「クリックされないと意味が無い」か「バナーが表示されるだけでも意味がある」かは、広告主のビジネスモデルによって変わってきます。

例えば以前に言及した、アニメCharlotte番宣広告、ゲームソフトの咲-saki-全国編 PSvita、GOD EATERの発売日告知バナーなどは、バナーが表示されてユーザーの目に届くだけで目的を果たしているといえます。

バナーを見れば「あ、来月に○○の新作が発売されるのか。よし、Amazonで予約しておくかな」となるからです。だから、クリックされなくても良い。ゲーム発売の告知だけでなく、ブランドを重視する企業なども、広告が表示されるだけで知名度アップに繋がるので、それで良いのです。(だからこそ、クリック数だけでなく、インプレッション数で費用を取られるタイプのWeb広告が存在します)

ランディングページを作ってそこからの商品購入を目指している場合は、たしかにクリックされないと意味が無いのですが、そうでないケースも多々あるのですね。

「自分がそうだから、他の広告主もきっとそうだろう」といった拡大解釈的な推論飛躍に対するツッコミが、上記のものです。

一番反省していること

今回もっとも反省しているのは『会話形式のブログ』の利点を活かせなかったことですね。会話形式の記事では、ひとりの話者の主張に対して、もうひとりが反論するという『ディベート(討論)』を展開することが可能です。

つまり、ときちゃんの主張に対して、私がもっと的確なツッコミ(上で指摘したような反論)を入れて議論を深めていれば、もう少し良い記事にできたでしょう。

会話形式文体を効果的に扱えなかったのが最大の反省点です。これからもっともっと精進していきましょう。

新たに読者登録してくださった方ありがとうございます。

これからも『ときまき!』をよろしくお願いします。

(おわり)

広告ブロックでWebメディアは衰退しないし、アドブロッカーはフリーライドではない

燃え上がっている話題に便乗して、炎上PVを稼ぐのは正直どうかと思いますが……。

ええやん! どんどん燃やそ!!!

「Webメディア運営者 vs アドブロッカー」という対立構造の誤謬

広告ブロックのアプリが氾濫すれば、広告収益でブログやサイトを運営している人は、損失を被る。ゆえに広告ブロック問題を語るときに『Webメディア運営者 vs 広告ブロッカー』という対立構造が用いられるのんやけど、これは大きな間違い。

上の図のような構造は、前提として間違ってるんやね。

Webメディアがユーザーに対して、記事コンテンツを提供しているのは正しい。しかし『ユーザーがコンテンツの対価として、運営者に収益を与えている』というのは間違い。

上図のような認識だと『コンテンツの対価を支払わない広告ブロックユーザーはフリーライド(ただ乗り)をしている!!』といった発想をしてしまう。

実際は、ユーザーはコンテンツに対して何の対価も支払っていない。支払っているのは閲覧ユーザーではなくて、広告主や! ユーザーではなく広告主!!

よって正しい認識は次の図のようになる。

ユーザーは、興味のある広告をクリックするだけ。そして、広告主がWebメディアに対しての対価を支払っている。よって対立構造は『広告主 vs 広告ブロッカー』という視点から論じるべきやね。

何が違うんかって言うと『Webメディア運営者 vs 広告ブロッカー』であれば広告クリックは収益となるのに対して、『広告主 vs 広告ブロッカー』であれば広告クリックは費用となること。

広告主は、ユーザーがバナーをクリックするたびに費用を支払わなければならないのだから、Web運営者側とは正反対の考えをする。

『広告がクリックされれば(俺たちは)儲かるからいいんだ!』ではなく、『商品を購入する意欲のあるユーザー、商品に興味のあるユーザーにだけ、広告をクリックしてほしい』

広告主が望むこと

  • 誤クリックを避ける
  • 商品購買意欲のないユーザーのクリックを避ける
  • 商品購買層のユーザー以外へのバナー配信を避ける

こうすることで、余計な広告コストを削減できるし、1クリックあたり換算の儲けを最大化することができる。

Adblockユーザーはもともと、バナークリックして商品を購入する可能性の極めて低い人たちなので、彼らが広告を非表示にしたところで何一つ困らない。むしろターゲット選定の手間や、誤クリックが減ってありがたいくらい。

(ただしパケット節約とかの目的で、商品購買層にまでAdblockが普及して、広告ブロックが導入されるのはめっちゃ困る。そうなればうちは手のひらを返して「アドブロック滅びろ!!」と叫ぶ。広告嫌いな人が、広告を消す目的で入れる分には構わない。そうでないパターンが困る)

とにかくここで主張したいのは、広告が嫌な人がAdblockを入れたところで、広告主は何一つ損をしないこと。誤クリックや望まぬクリックが減るのであれば、嬉しい。そうなれば広告主としては、1クリック単価をもっと引き上げて出稿したって構わない。スポンサーが安泰でこれからも広告料を支払う意思がある以上、広告ブロックでWebメディアが衰退するわけがない。

せやから広告ブロックしてる人は「フリーライダー(タダ乗り野郎)」でも何でもない。元から広告配信すべきターゲットユーザーではないというだけの話。

以上、ダンガンロンパ!

最後に、ポジショントークと言われたくないから弁解するけども、うちは一切広告ブロックはしてないで。Webビジネスを営むものにとって『他社の広告』ほど貴重な情報源はないからな。バナー広告は誰よりもよく観察している自信がある。

ずいぶんと煽りましたね。もうどうなっても知りませんよ……。

もしこれで炎上したら、私だけ別ブログに逃げ込んで知らないふりをしますからね!

ええのええの、これでホッテントリ入りしたら、広告いっぱい貼って、まねまねマネタイズや!!

(おわり)

この記事の元ネタ(くっ…増田に釣られてしまうとは……)

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リクガメは二足で立ち上がる

 リクガメを飼育していて一番驚いたのは、彼が二足で立ち上がることだった。リクガメは私が考えているよりもずっとアクティブで、岩や植木鉢によじ登ったり飛び降りたりなどの立体動作は平気でこなす。そしてたまに甲羅からひっくり返ってしまって、自分では起き上がれなくなる。うかつに目が離せない。

壁により掛かるリクガメ

 壁面により掛かるようにして、彼は身を起こす。何だこの程度かとがっかりされたかもしれない。でもまだ本気を出していない。

すだれを押しのけるリクガメ

 転落防止と日除けのために、上にはすだれをかけていた。いともたやすく前足で払いのけられてしまった。彼は壁の向こう側のセカイを目指しているようだ。

立ち上がろうとするリクガメ

 外に出たがっているようで、切なくなってくる。今度散歩に連れて行こうと思った。

直立するリクガメ

 完全に、二本の足で直立している。アルプスの少女もびっくりだろう。その姿にはどこか力強い意志を感じる。

チンゲンサイを食べるリクガメ

 壁を乗り越えそうな勢いなので、慌ててチンゲンサイを見せると、すぐに戻ってきた。このヨツユビリクガメは完全草食性とされる。チンゲンサイやコマツナなどの生野菜のほか、タンポポ、オオバコ、カラスノエンドウ、クズ、猫じゃらしの葉っぱなどの野草を好む。バナナやイチゴやメロンなども大好きだが、果物の上げ過ぎは健康に良くないそうである。タンポポの黄色い花や、シロツメクサ(クローバー)の花も大好物だ。

 爪と嘴がだいぶ伸びてきた。来週にでも動物病院に連れて行こうと思っている。リクガメは冬眠をする。けれど飼育下では、室内で冬越しをさせるため、けっこうな暖房代がかかる。餌も、ドッグフードやキャットフードのような万能食が存在しないから、野草の採取や家庭菜園に勤しむ必要がある。それから床材の土も交換しなければ……。

 このようにリクガメ飼育はなかなかの手間暇がかかるのだけれど、かわいい。生涯付き合っていきたい生き物だと思った。

(おわり)

はてなの『ヘッダー』を消すと一部Androidブラウザでブログがスクロールできなくなる問題について

 スマホ版はてなブログの、上部に表示されるヘッダー。

 はてなブログProのユーザーであれば、cssを追記して、display:none;で消すことができる。あるいは、レスポンシブ対応のテーマを使えば、『設定』→『ヘッダとフッタ』から、非表示にすることができる。

 このようにしてヘッダーを消した場合に、ごく一部で起こりうるバグについて紹介する。

Androidブラウザ2.3系だと、ブログがスクロール不能になる

 Androidのスマートフォンには『ブラウザ』という名前のブラウザアプリが標準装備されている。なかでも2011年頃に普及したAndroid version2.3系のブラウザはいろいろと不具合が多く、多くのWebデザイナーが泣かされた。

(例えば『ページトップへ戻る』のアンカーリンクが無効化されたり)

 なかでも隠しコマンド的なバグとして恐れられたのが『iframe要素をdisplay: noneすると、スクロール不能になる』というもの。ページがスクロールできなくなるので、実質的にその端末ではコンテンツが読めなくなる。致命的だ。

 お気づきのとおり、はてなブログのグローバルヘッダーはインラインフレーム(iframe)である。ゆえにヘッダーを消すと、ごく一部のAndroid端末では不具合が生じる。

 実機(NEC N-06C MEDIAS WP N-06C for DoCoMo/Androidブラウザver 2.3.3)で確認してみたところ『ヘッダーを消しているはてなブログ』の30のうち6ブログは、当機ではスクロールができずに記事が読めなかった。

 じつは昨日、ブログ開設一周年記念にブログデザインを変えたのだが、このときに発覚したのがこの問題。原因を突き止めるのに休日を6時間も消費してしまった。悔しい。

対処法はあるの?

 css追記での対処は難しいと考えられる。

 bodyの「overflow:hidden」を「scroll」で上書きして、#wrapperで再び「hidden」かけるとか……したら行けるのかもしれないが、すごくモヤモヤする。

 あるいは、display:none以外の方法でヘッダーを消してみるとか。

 position:absolute; bottom:-999999;のたぐいの禁術を使って、『ヒャッッハーーーー!!! ヘッダーもろとも宇宙の果てまでぶっ飛ばしてやるぜーーーーーー!!!!』みたいな。いや、これはオススメしない。それこそどんな不具合が起こるか分からないし、SEOでペナルティを受ける可能性がある。

対処法1.ブログのデザインテーマを変える

 スマホ版ヘッダーを非表示にしているはてなブログでも、30のうち24は問題なくスクロールできた。つまり多くのブログでは、ヘッダーを消しても大丈夫ということ。ごく少数の「デザインテーマcss」と「ヘッダー非表示css」が融合し、そこへさらに希少種である「Android 2.3.x」が加わってこの奇跡的なバグは発生するらしい。

対処法2.ヘッダーを消すのをあきらめる

 途中で考えるのが面倒になって、このブログでは結局ヘッダーを消すのはあきらめた。はてなユーザーであれば、むしろヘッダーがあった方が何かと便利なので(すぐに記事を投稿できたり、購読中のブログを確認できたり)まぁいっか☆と思った。

 ヘッダーの『追尾機能*1』は画面が狭くなるのが嫌だったので、css追記でオフにした。

 具体的には「#globalheader-container {position: fixed;}」を {position: relative;}で上書きする。absoluteでも可。使用テーマによってはセレクタの指定方法が変わってくる。

 Proではヘッダーを消すのがOKなくらいなので、追尾機能を消しても怒られることはないだろう。(公式テーマでも追尾しないタイプのがあるし)とにかくこれで、スクロールしてもヘッダーがついて来ない。バグも起こらない。

対処法3.対処しない

 おそらくこれが一番良いだろうと思う。今回の事例ははっきり言って、超レアケースである。Androidブラウザver2.3.3は、未来には完全に消えゆく運命だ。2015年でver 5.1まで更新されているので、わざわざこんな古いブラウザでネットを見るユーザーは少ない。今ならSafariだってChromeだってOperaだってスマホで使える。

 対処しなかったところで、SEO(モバイルフレンドリー)への影響は皆無であり、Adsense等の収益への影響もほぼ無いと断言できる。

 つまりは、気にしないのが一番ではないかと。

おわりに

 ここまで引っ張っておいて、こんな結論になってしまってなんだか申し訳ない。個人的にはけっこう悩んでいた問題で、こと「はてなヘッダー問題」に関してはググってもまったく情報が出てこなかったので、もしかしたら自分と同じような人が検索してきたときの助けになればと、記事を書いた。以上、お役に立てれば幸いである。

 

(おわり)

*1:ページをスクロールしてもヘッダーが上部固定されたままついて来るデザインで、現代ではお洒落だとされている。ツイッターなどが有名

フルフル

 不登校してた頃、パソコンやスマホはなかったので、部屋に引きこもってゲームばかりしていた。でもゲームは得意じゃなかった。

 PSPって携帯ゲーム機で、はじめて買ったのが「LocoRoco」ってソフト。ロコロコ、かわいい。ミカンをふにゃふにゃにした感じのゆるキャラが、飛んだり跳ねたりするゲームだ。LとRボタンしか押さなくていいので、これなら私にもできると思った。甘かった。

 チャカレチャパッパ、フニャラカラッパ、チャッパリスッポンポン♪みたいな気の抜ける音楽とともに、かわいいミカンが「ワヒョーイ」と元気に飛び出していって、野に咲いている花をむしゃむしゃ食べると、ミカン君は大きくなる。大きくなりながら飛び跳ねて、ゴールを目指すのだけれど、道の途中で黒いオバケに襲われてあっけなく死んだ。かなしい。死ぬ間際に「ヒュー! ギャララッパポーイ!!」とミカンは叫んだ。ミカンは、私に何を伝えようとしたのだろう。

 

 次にやったゲームは「モンスターハンターポータブル」だった。まだ学校に通っていた頃、クラスの男子たちが休み時間によく話題に出していた。私は血が出たり生き物を殺したり、そういうゲームは苦手だし、そのときはまったく興味がなかった。でも昼休みになると図書室で、ホラーの短編集を読んでいた。なんでホラー小説は好きなんだろう。うまくは説明できないけれど「私が今ここに生きていること」をホラー作品は肯定してくれているような気がした。

 兄の勉強机の本棚に、「モンスターハンター」のソフトが立てかけられていて、思わず手が伸びた。「やっていい?」と訊いたら、兄は振り向かずに「やるよ」と言った。兄は今日もパソコンとにらめっこしていた。就職のサイトを見ているのだと思う。

 モンスターハンターは画面が綺麗でびっくりした。ロコロコはシンプルなイラストだったけれども、モンハンは目の前に現実が広がっている。雪山のふもとにある村にたどり着いて、私は村長からお仕事をもらった。はじめのうちは、森でキノコを採取する簡単なお仕事だったけれども、やっぱりモンスターハンターだから生き物を狩ってこなければダメだよと村人に言われた。

 

 湖のほとりで、牛みたいな生き物がのほほーんと草を食んでいた。私は手に持っていた刀で、恐る恐る牛を斬り付ける。その草食動物は人間に慣れているのか、近づいても逃げないのだ。鮮やかな赤の血が飛び散って、私はびっくりした。牛は悲鳴をあげて力なく地面に倒れ込む。ポケットに入れていた小型ナイフで毛皮を剥いで、肉を手に入れた。私はモンハンを貴族の嗜みのようなものかと考えていたけれど、誤解だった。《狩猟》は人間が生きるための行為そのものだった。

 その後、私は狩人として生き始める。かわいい鹿とか、ペットにできそうな子豚とか、切り刻んで殺した。はじめは罪悪感がすごかった。世界は弱肉強食なんだ。現実では明らかに強者に食われる、こんな弱い私が、罪のない命たちを殺生していて良いのだろうかと悩んだ。

 ある日、山で暴れていた凶暴なイノシシの討伐依頼が出た。危うく死にかけながらも、なんとかやっつけた。山から村に戻ると、みんなに「よくぞ村を救ってくれた」と感謝されて、嬉しかった。私でも役に立てることはあるんだと思った。

 

 朝、家を出て朝日を浴びていると、村長さんがやってきて言った。

「そろそろお主も一人前の狩人じゃし、フルフルを狩ってきて欲しいのじゃ」

「フルフル、ですか……?」

 聞いたことのない生き物だった。かわいい名前。きっとハムスター、いや真っ白でモコモコしたうさぎちゃんみたいなモンスターなのだろう。私はそんなかわいい生き物を狩るのは嫌だったけれど、村長さんの頼みは断れなかった。

 フルフルはやはり雪うさぎの類なのだろう。雪山に生息するとのことだった。

 私はホットドリンク(味はおしるこである)を飲んで寒さをしのぎ、雪山の頂を目指した。手がかじかんでいて、刀の柄を握るのが痛かった。はやく済ませて帰ろう。  

 山頂にたどり着く。あたり一面が雪に覆われていた。

 ふいに、バサッ、バサッと頭上から羽ばたく音が聞こえた。カラスかな?と思って見上げると、5メートルくらいはある巨大な、雪見だいふくみたいな物体が落っこちてきた。

 不気味な白い巨体からは、ちくわのような首がにょきっと突き出ていて、真っ赤な口紅をつけた大きな口がひとつ、笑っている。体は白いが、毛は生えていない。ゴムみたいにぶよぶよしている。四本足で直立していて、おしりからはトイレのモップのような形のしっぽが、ぴょんぴょんと揺れていた。それはモンスターというより、ホラー小説に出てきそうなオバケだった。オバケは顔をこちらに向けてにやりと笑った。目はない、のっぺらぼうだ。口だけが笑っている。

「フョオオオオオオオ!!」とそいつは叫んだ。

 私は一目散に逃げ出した。洞窟のなかに入り込むと、さすがに奴は追ってこれないようだった。

「なに。あれ……」

 ホットドリンクの効果が切れた。私はうずくまって、身体を震わせる。まさかあれがフルフルなのか。ネーミング詐欺ではないのか。  

 詳しくは知らないけど、都市伝説で「くねくね」というのを聞いた。くねくねは正体不明のオバケで、それを見ると発狂してしまうらしい。まさにそんな感じだった。

 戦わなければならない。足はまだがくがくしていたけれど、刀を杖代わりにしてなんとか立ち上がった。こんなことなら、弓か銃を持って来れば良かったと、後悔した。

 山頂に戻ると、白いオバケ、フルフルはまだそこにいて尻尾を地面に突き立ててなんかプルプルしていた。

 刹那。

 フルフルの体からほとばしる、無数の稲妻。

 辺り一帯の地面が焦土となり、積もった雪が黒く融ける。

 フルフルがこちらを振り向いて、目が合った。いや、フルフルには目がないから、口と口が合ったというべきか。すごく嫌だ。

 私はもう恐いけどやけっぱちになっていて、訳の分からない言葉を咆哮しながら突撃する。両手で持った大太刀をめちゃくちゃに振り回しながら。フルフルは醜く口を歪めると、大きな巨体を一回転させる。しっぽのゴムに刀身が弾かれて、私は体ごと吹っ飛ばされた。

 間髪を入れず、フルフルが電気をまとった体で飛びかかってきた。なぜ絶縁体の塊のようなこいつが電気を操れるのか不思議だったが、私は刀を捨てて逃げる。でも寒さでスタミナが持たず、転んでしまう。背負っていたリュックの紐が切れて、雪の上に落ちた。すぐ目前に、悪魔の唇が近づく。フルフルは大きく口を開いて、それは私の身体丸ごと飲み込もうと迫った。嫌だ、死にたくない。

 一瞬、村長さんや村人たちの優しい笑顔が記憶を過ぎった。そうだ、これは神から私への罰なのだ。ずっと現実からも自分からも逃げて、前を向かなかった私への。私はここで死ぬ、殺される。でも嫌だ、こんなブヨブヨのちくわオバケなんかに――。

「殺られてたまるかあああああああああ!!!!!!」

 コンマ一秒の差で初撃をかわす。巨大な歯と歯が空を切ってかち合う音が聞こえた。背後には断崖絶壁、次は避けられない。だが時間は十分だった。なぜならリュックのなかの大タル爆弾には、すでに着火準備がされていたのだから。

「フョョョョョョョョョョョョ!!」

 フルフルが全身から電気を発生させる。それが奴の死にどきだった。

 ……、……着火。

 合計3個の大タル爆弾が、一斉に爆発する。

 爆風に巻き込まれる瞬間、私はふっと笑った。思えば、私もフルフルも、同じだったのだ。醜くて、疎まれて、寂しくて、彷徨って、ただ孤独に叫んでいる。誰にも理解してもらえない。だからせめて、私がこいつと一緒に、死んでやるのだ。

 

 さようなら、そしてごめんなさい。

 その日、村の北方に位置する雪山から、一筋の煙が立ち昇ってゆくのが観測された。村人は事態を察し、手を合わせて祈ったのだという。その後捜索が行われたが、若い狩人と、討伐対象であるフルフルの遺体はついに発見されなかった。

 

「ミユキ! ミユキ!」

 扉の向こうから、兄が私の名前を呼んでいた。

「いったいいつまでゲームしてるんだ。夕食だぞ」

 兄はあきれた様子で言うと、すぐにリビングの方に歩いて行った。

 私は、扉を開ける。

 

 そうだ、私の戦いは、ここから始まるんだ。

 

(終わり)

 

※この記事は実在するゲームを題材にした体験記ですが、一部創作を加えており、実際のゲーム内容とは異なる描写が含まれています。また物語はフィクションであり、実在する人物・団体・雪見だいふくとは一切関係ありません。

※元ネタ ロコロコ - Wikipedia モンスターハンター - Wikipedia

 

デレたGoogle先生と、僕とアフィリエイト。

「GoogleAdsenseは転職サイトばっか紹介せずにもっと萌える広告よこせや(ゴルァアアア!」

 と先日ブログで書いたら、どうやらGoogleの偵察botが記事を読んでくれたようだ。なんかやたらと『PS Vita「咲-Saki- 全国編」』の広告が出てくるようになった。嬉しい。

 褒めた甲斐があったぜ。よしよしって頭を撫でてあげたい。わかったわかった、咲-Saki-は発売されたら絶対に買おう。これは約束だ。PSP版の頃からプレイしていて、次回作まだかと5年も待ち焦がれていたのだ。

 もしかしたら、萌えバナーだけをクリックするようにすれば、Googleの方で「あ、こいつ二次元にしか興味ないのか(察し」って感じで学習して、広告を最適化してくれるのかもしれない。

 

 なんてことはなく、種明かしをしてしまうと、じつはGoogleアカウントの設定をちょっといじっていた。手順は次の通り。

  1. Google Accountsにログインする
  2. 『個人情報とプライバシー設定』→『広告設定』→『広告設定を管理』と移動
  3. Google 広告の管理』というページで『興味や関心』を設定することができる
  4. ここで僕の場合は「アニメ・漫画」「ゲーム」を登録した

 なんと上記の方法で、配信される広告のカテゴリを大まかに設定できるのだ!(他のカテゴリを除外できるわけではない)

 最近似たような広告ばかりでつまらないな、という人は、このページで新しい『興味や関心』を追加しておくのも手。

 

 前置きはさておき。

 アフィリエイトで稼ぐというと「不労所得」の四文字がつきまとうが、あれは情報商材のなかだけの話で、実際のところは「過労所得」なのだ。

 かつて僕がアフィリエイト事業をしている会社の従業員だった頃、アフィサイトやアフィブログを数千個単位で量産していて、みんな一日に二万文字くらい書くのは当たり前の世界だった。なんと恐ろしいビジネスだと思った。Google先生がパンダとペンギンの刺客を送ってあの会社をぶっ潰していなければ、僕は今でも社内アフィリエイターをやっていただろう。

 本業でアフィリエイトをやるための『一日二万文字』という数字は驚異的だ。毎日それだけの文字数をコンスタントに書けるならば、たぶんプロ小説家になるのに然程時間はかからない。僕は、挫折した。でもイケダハヤトさんなら、きっと余裕で書ける。

 上の記事で彼は『ぼくは今や、1日15本の記事を生産できます。(引用)』と豪語している。1記事あたり2000文字だとすれば、1日で3万文字だ。凄まじい。書ける人は時速6000文字くらい平気で書けてしまうので、ほんとうにすごい。煽りスキルの高さでネガティブなブコメを集めてしまうけれども、イケダハヤトさんはプロフェッショナルなのだ。憧れるとか羨むとかいうベクトルではないけれど、尊敬する。恐れ入る、の方が近いかもしれない。

 

 今日においては、アフィリエイトで、薄っぺらい内容のゴミサイトを何千も量産するのは「クールじゃない」と言われるようになってきた。「クールじゃない」のは当時から分かっていたが、稼げたからそれで良しとされた。クールじゃない輩を「薙ぎ払えッ!!」で一掃してくれたのがGoogle先生のペンギン・パンダアップデートだったのだ。

 そんなわけで「コンテンツ・イズ・キング」の台頭である。アフィリエイトで稼ぐにはなかなか良い時代になった。しかしそれでアフィリエイトが不労所得となることはなく、やはり一万文字、二万文字をひたすら積み重ねてゆく地道でこつこつとしたビジネスであり、はぁサマージャンボ宝くじ当たらねぇかなぁって感じである。株式投資で一攫千金できたら良かったのだけれど、持ち株は「日経の下げには連動するけれど、上げには連動しないタイプ(よくある」の銘柄で、今日は家に帰ってきて『日経平均株価 前日比+1343.43』の歴史的暴騰のニュースに心ときめかせ、わくわくと証券会社のサイトを開き、持ち株のチャートみたらまだ年初来安値をうろうろしていて「なんでやねん!」とAmazonのダンボール箱を放り投げたのであった。

 

 とかく生きるのは難しい。お金ってやつは臆病者で、なかなか懐に入ってきてくれないくせに、逃げ足だけは速い。この世界で懸命に生きる人たちを、僕は尊敬している。

 生きる、生き残ってみせる。天文学的に膨大な《言葉》に溢れた、このネットの世界で。

 

(おわり)

 


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