ときまき!

謎の創作集団による、狂気と混沌の執筆バトル。

みんなでやろう! はてなハイク!!

魚崎とき

やほー! うちは、このブログの主人公、魚崎とき(うおざきとき)やでー!!

「ときまき!」のメインヒロインのはずやのに、まさか登場が2ヶ月ぶりとは……。

さておき、今日は「はてなハイク」っていう最新鋭にして大流行のSNSを紹介するで。

はてなハイクとは?

殺伐とした"はてな"における、たったひとつの癒やしのオアシス。承認執着に疲れきった旅人が足を運ぶその場所は、猫の写真で溢れた安らぎのセカイ。

はてなハイクの良いところは、その場で絵を描いて投稿できる《お絵描き機能》があるところ。うちも、お絵描きメインで投稿しとうで。参考までに、今までにはてなハイクに乗っけたイラストをポイポイ貼ってく。

ネコ

おはようさぎ

男の子

おやすみかん

おやすみカエル

おやすみネコ

おやすみバナナ

おやすみゾウ

おやすみときちゃん

おやすみクラゲ

こんな感じ! これらのイラストは、みんな「はてなハイク」の投稿画面で直接描いたもの。投稿画面には「ペイント」みたいなツールがあって、筆、塗りつぶし、水彩画、シンメトリー、カクカク、直線、消しゴムなどなど、意外と高性能なお絵描き機能が備わっているんやで。色もたくさんあるし「元に戻すボタン」で簡単に書きなおすこともできる。

はてなハイク投稿画面

 上が実際の投稿画面。《Haiku!》をクリックすると、イラストが投稿される。ちなみに【おやすみ】って書き込んでるのんが、はてなハイクの【お題 (キーワード)】なんや。表題部分に「おやすみ」って名前をつけて投稿すると、おなじ「おやすみ」というキーワードをつけて投稿した人と繋がることができる。(ツイッターで言うところのハッシュタグみたいなもん)

「おやすみ」は人気キーワードで、今までに累計で32万件投稿されたみたいやで。

ツイッターとの違い

はてなハイクとツイッターは似て非なるSNS。簡単にツイッターとの違いを説明するで。

1.はてなハイクのトップページから、みんなの投稿を一覧できる!

ツイッターみたいな利用者数の多すぎるサービスでは、全ユーザーの投稿一覧なんて追うことが不可能で、ふだんはフォローしてる人のツイートを見るんがメインやと思う。

せやけど、はてなハイクは過疎ってる小ぢんまりとしたほのぼの系サービスやから、トップページからみんなの投稿を見ることができる。まったく絡みのない知らない人からでも、ポイポイと星(はてなスター)がもらえたりする。ツイッターの「フォロー×フォロワー」よりもさらにゆるいフニャフニャな関係で、繋がることができるんやね。

2.星がもらえるのはいまや「はてなハイク」だけ!

ツイッターのフェイスブック化が著しい。ふぁぼスターが廃止され、いいねハートに変わってしまった。いまや、星をゲットできるSNSは、はてなハイクだけになってしまった。

うちも若かりし頃はαツイッタラーとして名を馳せた存在で、界隈ではファボイーター《星を喰らう者》として畏れられとった。ツイッターを追放された《星喰人―ファボクラウド》たちは、深い絶望と悲しみの果て、憩いのオアシス「はてなハイク」へと辿り着く。オアシスには、はてなスターが綺羅びやかに泳いでいる。

ところが、ハイクでは大量のスターを獲得することは意外と難しい。(1個か2個くらいならよく貰える)スター中毒者にとっては、ハイクは案外厳しい環境かもしれない。

増田にもこんな投稿があった。(恐ろしい恐ろしい……)

たしかにハイクは星集めの場としては向いていない。(ブログやブクマの方が貰いやすい)むしろ、星が欲しいよぉ!といった承認執着から遠ざかって、ほのぼのまったり心を癒やすための場がハイクなのん。(でも星は欲しい

3.はてなプロフィール画面で「ハイクちゃん」のアイコンが表示される

ハイクちゃん

はてなハイカーになると、はてなのプロフィール画面(ときまきさんのプロフィール - はてな)で、はてなハイクのかわいいアイコン画像がご登場。ささやかなコレクター欲求が満たされる(?)。メダルの方は、はてなハイクの投稿が7日を超えると貰えたはず。

他にも、うちの使いこなせていない機能がたくさんあって、例えばフォトダイアリーの写真にイラストを描き込んで投稿したり、動画を載っけたり、音声ファイルを載っけたり、IDコールを飛ばしたり、スターフレンドに返信を飛ばしたり、ブログパーツにして貼っつけたり、いろんなことができるみたい。

まとめ

個人的には、さくっとお絵描きできて、さくっと投稿できる。これが一番うれしい。ツイッターには、こんなに気楽にお絵描きできるシステムはないからな。

はてなハイクはもっと評価されていいと思うで。

みんなでやろう! はてなハイク!!

(終わり)

 

自分の頑張り具合を「定量的」に評価する

時巻エイ

  お久しぶり、と言って果たして伝わるだろうか。なにせ『僕』がブログに登場するのは3ヶ月ぶりなのだ。もしも読者のなかに「僕を憶えているよ!」という方がいらっしゃれば、今すぐにでもメロスとセリヌンティウスのような熱い抱擁を交わしたい。

 初めての方ははじめまして。僕は時巻エイ(ときまきえい)。3ヶ月前はフリーターだったけれど、今は専業でWebライターをやっています

執筆文字数を記録するとやる気がなくても書ける

 やる気を出す方法を考えるよりも、やる気を出さなくても何とかなる方法を考える方が、役に立つ。ライティングというのはクリエイティブなお仕事に見えて、その実80%は地道な作業(たんたんタスク)だ。モチベーションの維持が難しい。

 売れっ子ライターならば次々と舞い込んでくる仕事と「〆切」こそが原動力たり得るのだけれど、僕のようなヒヨっ子ライターは営業をかけなければ仕事が取れない。(つまり「原稿を書かなくても良い」状態を作るのが簡単。疲れたら営業をストップすればいい)

 とはいえ、そんなグータラな日々を続けていれば、貯金が底をつくのは時間の問題。未来も成長もない。やる気がでない日でも、ストイックに原稿を書き続ける方策が必要なのだ。書くことを習慣としなくては。

 そこで、編み出した方法がこれ。名付けて【レコーディング・ライティング

10月執筆文字数推移

 Excelでその日の執筆文字数を表管理して、月累計の執筆文字数をグラフとして出力している。10月の目標値は10万文字(赤い棒)

 結果として10月の総執筆文字数は10万2715文字で、何とか目標を達成した。グラフを見ると一目瞭然だが、10月上旬~中旬はほとんど書けない日が続いた。スランプだった。(25日の時点で4万文字しか書けていない)

 グラフをつけていてさすがに焦りを感じ、最後の1週間で怒涛の追い込みをかけた。レコーディングしていなければ、10月はダラダラしたままに終わっていたかもしれない。定量化(やったことを数値化して見えるようにしておくこと)は大切である。

 ブロガーさんは、広告収益やPV数を発表したがる。これは自身の成果を「定量化」して、モチベーション維持を図るのが目的なのかもしれない。

11月の執筆文字数推移

 ちなみに先月11月は、このような結果となった。

11月執筆文字数推移

 11月目標値は15万文字。総執筆文字数は15万2286文字。これも何とか達成。

 もしも「1文字単価2円」で仕事を請けていれば、月30万円ちょっとの収入である。「おっ、Webライターも案外悪くないじゃん!」と思われるかもしれない。しかし僕の場合は平均すると「1文字0.5円」程度なので、現実は月収入が10万円を下回っている

 繰り返すが、僕は副業ではなくて、専業ライターである。ついでに株式投資家でもあるけれど、負けてる……:;(∩´﹏`∩);: :;(∩´﹏`∩);: :;(∩´﹏`∩);:

 文字単価を上げるためには、努力して、もっと良い文章が書けるようにならなければいけない。頑張ろう。いや、頑張らなくても書けるように、頑張るのだ。

12月の目標は、20万文字!!

 さあ、年末に向けてラストスパートだ。

(終わり)

短編小説の集い 第14回「食」の感想

 短編小説の集い 第14回、テーマは「食」でした。

 簡単にではありますが、参加者さんの投稿作品の感想を書いていきたいと思います。

 ネタバレがあるため「まだ読んでないよー」という方は、上の投稿作品一覧から先に作品を読むことをおすすめします。

短評

 奥さんと旦那さんの人物描写が良かったです。

 積み上げられた本のなかに倒れてそれでもページを繰る手を止めない旦那さん。「今いいところなんだ、邪魔しないでくれ」と繰り返される言葉が、旦那さんの人物像に色濃く印象を与えます。

 旦那さんの「~邪魔しないでくれ」は作中に2回登場しますが、1回目の台詞では(嗚呼、奥さん気の毒に。旦那さんはきっと冷たい人なんだな)と読者に想像させる。そして2回目の台詞では(いやいや、旦那さんは純粋に本に夢中になっているだけの読書狂じゃないか)と認識を訂正させる。旦那さんがどんな人物であるかの説明の運びが、とても丁寧で分かりやすいと感じました。

 あと奥さんの心理描写はユーモアがありますね。「今いいところなんだ、邪魔しないでくれ」を勘ぐって、ほんとは夢中になっているのは本ではなくてよその女では?と疑ってみたり、本とスープとを対比させて(本は冷めないのだから先にスープを飲んでよ!)と思ったり、そういった奥さんの内面の描き方が面白かったです。

 オチは短編小説らしい、最後にフフッと笑わせてくれる後味の良い読後感です。

 SF!と思って読み進めていたのですが『航海日誌七日目』以降の驚きの急展開で、読後感としてはとってもホラーな感じの作品でした。ホラー大好きです。

 最後の一文は、なかなか余韻を残しますね。船が地球に到着し、人類がその《ギフト》と出会ったとき、それはもう人類滅亡の幕開けにすぎないのでしょう。

 ホラー作品として見た場合に、物語のスパイスとなっているのが「ハミングと音楽」個人的にはこのハミングの描写が醸しだす恐怖・不気味感というのは圧倒的だと感じます。こう、頭から葉っぱが生えたり、顔がだんだん真っ赤になっていったり、そういうのもビジュアル的には怖いのですが「ハミングを口ずさむ」というのは脳の内側から揺さぶられる《侵食》を意味しますから、そりゃもう恐ろしい。

 私たち人間は美味しい食べ物を食べて、幸せになりますし、身体の成分は「食べたもの」によって構成されます。換言すれば「食べものに侵食されている」わけで、そんなことを考えながら読んでいました。

『ケイ』は魅力的なキャラクターでした。主人公と一夜を過ごすシーンは、うまい感じにさらっと描写するなぁと。ケイが当初、フェーヤを偽造信号で操ることに反対するところなどは、彼女の《自由》に重きを置く思想が反映されていて、細かい伏線ではありますが丁寧だと感じました。

 ひとつ気になったのが『ティンカー』です。ティンカーは5日目以降は登場しないので、その後どうなったのだろう、と。ティンカーがちゃんと2人に警告してくれていれば惨劇は防げたのでしょうが、科学の結晶たる優秀な頭脳も『人間の自由への飽くなき欲求』までもは止めることができなかったようです。

 実際のカボチャ料理の描写に絡めて、カボチャをメタファーとして用いた会話が続き、ふむふむなるほどと思いながら読み進めていました。とくに、3段落に渡って描かれている「カボチャのポタージュ」「パンプキンパイ」「カボチャのプリン」ですね。これはヨダレが出てきそうな美味しい描写で、勉強になりました。

 カボチャといえば、よく大勢の前でスピーチをしなければならない緊張するシーンで『聴衆をみんなカボチャだと思え!』みたいに言いますね。作中の主人公は、対人恐怖が重く、カボチャでさえも人の顔に見えてきて薄っすらとした恐怖を覚えてしまう。私もどちらかと言えば神坂茜タイプの人間なので、彼女には共感します。

 ところで、最後の方でびっくりしたのですが、乾さん『私が彼を退職させましたから』ってさらっとスゴイ発言をしている……。乾さんも会社で懸命に戦っていたのだなぁと感じました。

 テーマ「食」の切り口が斬新だったことと、あと《食通の客》がかっこ良かったです。料理の注文の仕方で食通であると《解る》というのは、初めて知りました。

 私はフランス料理店は行ったことがなく、テーブル・マナーもメニューもまったく分からないのですが(フランス料理を訊かれて『エ、エスカルゴ?』とかろうじて答えられるくらい)、なるほどそういう世界もあるのだなぁ、と興味をそそられると共に、美食家への憧憬の念を感じるところです。

 作中では「店主が美食家の前に、まず食前酒のリストを広げたこと(それを店主は失礼な振る舞いをしたと恥じている)」「訪れた客が、食前にコーヒーを注文している(フルコースのコーヒーは食後だと思っていました)」この2つの、繋がりのある描写がいわゆる《通にしか解らないセカイ》なのだと感じ取りました。いやしかし、注文票を見ただけで相手の食通レベルがわかる、というのは面白いです。

「食客(しょっかく)」は意味を知らなかったので辞書を引きましたが、なるほど、勉強になりました。面白い切り口です。描写が丁寧で、リアリティのレベルの高い作品でした。

 ミスリードした箇所がいくつかありました。冒頭から七段落目まで語り手(私とボクが混在?)の年齢を16~18歳程度と思い込んでいたこと、『シホ』を小~中学生くらいだと思い込んでいたことです。(シホの、ビールと口紅の描写のくだりで、各登場人物の年齢を誤読していたことに気が付きました)

 祖父がタクシーを運転していて『先生』と出会ってからのエピソード。とても引きこまれまして、ドラマを見ているような感覚でした。バックミラー越しに為される会話と車内の空気が、こちらにも伝わってきました。物語としては長編にもできそうで、続きがあるならばもっと読んでみたいなと思える読後感です。

 恋、ですね。どこか読んでいて緊張感の走るような、静かであるのにドキドキとする描写です。『私』が水羊羹を食べる姿は描かれていましたが、『先輩』が水羊羹を食べる描写はないため、先輩が水羊羹をどのように味わって食べていたかは想像するところです。

 お嬢さんの心をこめた隠し味に気づけるのが、先輩ではなく私だという点が切ないですね。時代としては昔の話ではあるものの、想起されるのはバレンタインのチョコレートで、今も昔も恋は変わらず。

 人物の象徴としては

  • 私→柘榴の実(甘酸っぱく/やがて木とは離ればなれになる)
  • 先輩→柘榴の木(逞しく/鈍感で)
  • お嬢さん→水羊羹(純真に一途で/先輩には味が届かず)

 と私は解釈しましたが、このようにさまざまな想像をさせる書き方が良かったです。

 自作品。

 三人称文体を克服するひとつのきっかけが掴めたと感じています。

 上達を目指したいです。

 読みやすかったです。

 ナイフとフォークを使って食べる魚料理…! これはいきなり出されたら悩みますね。(フォークで骨とかどうやって取れば……)

 せっちゃんの家での体験談がメインですが、それに対する主人公のものの捉え方(フカシ芋で十分だ、ワインの話、寝るときの話…etc)で、主人公のふだんの家庭環境が明確な解像度を伴って浮かび上がります。

 最後、主人公は歳を取っていて、遠い過去を回想する形であったことがわかります。積み重なる人生のなかでさまざまな出来事があり、ビスケットを見るたびに主人公はその記憶を思い出して、ほろ苦い感傷に耽っていたのかなぁと感じるところです。

 

(終わり)

たんたんタスクがやってきた(黒歴史ポエムの公開処刑所)

月波ツカサ

たんたんタスクがやってきた(作・月波ツカサ)

たんたん たたたん

たんたんタスクがやってきた

ことばを つむぐよ たんたんタスク

 

淡々と、坦々と、ただキーボードを押すだけさ

たたたん、かたたん、簡単タスク

思考、感情、いらないよ、言葉がどんどん降ってくるもの

ぽんぽん、ぽぽぽん、本気でタスク

 

さあうたえ! おどれ! お気に召すまま!

キーボードを舞うタランチュラ!

 

たんたんタスクは終わらない、きりきり〆切迫ってる

やるべきことは、たんたんと、手を動かすしかない、納期が来るぞ

時速五千字、日速五万字、徹夜はイヤだよ、ねむねむタスク

 

はっ……僕はいったい何を書いているのだ

自分は果たしてナニモノで、此処はイズコで、今はナンジだ

 

書かれた刹那、《思考》は命を失った

屍体は《言葉》、原稿用紙に磔にされ

読まれた言葉、新たな思考の胎児となる

書くこと読むこと、死と再生の繰り返し

 

生きるために書き、書くために生きる

喜び、悲しみ、苦しみ、怒り、すべてを喰らって言葉にするんだ

現実も虚構も、理想も自虐も、みんなみんな呑み込んでしまえよ

とかくこの世は、狂気だ、凶器だ

ひらりひらりと言葉をかわし

ぬらりと近づき一刺しだ

混沌に消える

 

たんたんタスク、笑った笑った

腹をかかえて、言葉をぷくぷく

身をよじってでも絞りだすのだ

 

文字数足りない? 装飾過剰で!

クオリティ低い? リライトします!

拡散されたい? 燃やせ燃やすぞ大炎上!

文才ほしいの? レトリック&レトリック!

 

たんたんタスク、泣いた泣いた

生きるの辛いよ虚構に生きたい

頭抱えてでも、ひねりだすのだ

 

指示語が多すぎ? あれをこうして!

より具体的には? メタファでごまかす!

主語が大きい? まったく最近のニンゲンは!

受賞したいの? 書いて、書いて、書きまくれ!

 

たんたんタスク、かたたん、かたたた

記事を量産、かたたた、たかたた

がたが怖いね、腱鞘炎

たたた、たたかい、〆切に勝つ

自分に負けるな、たんたんタスク

 

たんたん たたたん

たんたんタスクもおわりがくるさ

ポストに入れれば、投稿完了

エンター押せば、納品完了

 

書かれた言葉はわたしを抜けて、ふわふわと風船のように飛び立つの。相手の心にたどり着く、わたしの言葉。でもそれはわたしではなく、わたしに似ているオバケみたいな。

ことばの亡霊、こころの幽霊。

ネットの海をふらふらさまよう、魂たくさん吸っちゃって、言葉に酔うの、むさぼり食うの。

 

たんたんタスク、タスクは終わり

眠るじかんだ、きょうもおやすみ

 

(終わり)

恋する少女(はてな題詠「短歌の目」第9回11月)

 はてな題詠に初参加いたします。よろしくお願いします。

 今回、個人的に設定したテーマは『恋する少女』秋といえば恋の季節(遠い目

tankanome.hateblo.jp

 

1. シチュー

お返しにホワイトシチュー持ってきた女子力高いカレシがいたの

 

2. 声

「好きだよ」と告白された声録ったボイスレコーダー音質わるい

 

3. 羽

ねぇキミも恋をしたから壊れたの? 羽の千切れた蝶の亡き骸

 

4. 信

ほっといて! さわらないでよ! あっちいけ! ニンゲン不信、あたしサボテン。

 

5. カニ歩き

うさぎ跳びくるりまわってカニ歩きダイエットする姿見られた

 

6. 蘭

元カレがくれた紫蘭の花言葉「変わらぬ愛」ってそんなの知らん
※紫蘭(しらん)

 

7. とり肌

壁ドンをしてきたカレシ、二の腕がとり肌立ってプルプルしてた

 

8. 霜

クール系彼氏はいつも冷たくて私のこころ霜焼けしちゃう

 

9. 末

流れ星、見ながら抱いて愛しあう。今日はふたりで終末デート。

 

10.【枕詞】ひさかたの

ひさかたの月を真紅に染めたのはアナタの嘘でアタシの愛よ

 

ありがとうございました。

(終わり)

『人生の半分』第14回短編小説の集い投稿作

「あなた、お食事が冷めます」

 妻の洋子がたしなめる。洋子はすでに夕食の半分以上を食べ終えていた。

 文雄は、箸を持った手を胸のあたりで止めたまま、テレビ画面に見入っている。

 車椅子バスケの特集だった。車椅子に乗った青年たちがコートを滑り、くるくると踊るようにしてボールのパスを繋げる。受け取ったひとりがふっと手を掲げると、ボールはもうゴールリングに入っていた。

 洋子の視線に気がついて、文雄は慌てて味噌汁の入ったお椀に手をかける。

「すまん」

 味噌汁を喉へと流しこむ。

 若ければ希望があるのか、いやいや若いのに希望を持っているからすごいのだ。俺もまだ五十七なのにと文雄は思う。自分は百二十歳まで生きると決めている。だからまだ人生の半分にも達していないのだ。

 豆腐のつるつるとした舌触り。噛みしめると、オクラのタネがぷちりと弾けた。赤味噌特有の芳醇な香りが広がる。味噌は香りが難しい。熱しすぎるとすぐ香りが飛んでしまう。味噌の風味が一番引き立つ《時間と温度》が文雄の秘伝レシピには存在したが、いつの間にか妻の手料理に追い越されていたようだ。

 

「少し早い定年退職ですけどね、趣味を持たなきゃダメですよ。すぐにボケるんですから」

 スポーツなんてどうです、昔やってたんでしょと洋子は言う。それからボケたら嫌ですよ、を三遍くらい繰り返した。耳にタコができそうだった。

 文雄はキュウリの漬物を箸でつまんだ。咀嚼するたびカリッカリッという小気味よいリズムが刻まれる。やはり夏といえばキュウリだ。夏といえば子供のときは甲子園行くのが夢だったなあと文雄は思い出す。あの頃は自分がラーメン屋をやるとは夢にも思っていなかった。

 文雄はもういちどテレビの画面の方を向いた。車椅子の若者がインタビューに生き生きとした表情で自分の夢を語っていた。

「そうだな……」

 こんがりとした焼色の、アジの塩焼きに箸をつけた。ほくほくとしたあたたかさを柔らかく舌が包む。アジは夏が旬だ。程よく脂が乗って身も引き締まっている。ラーメン界で魚介ダシが大流行したとき、文雄も研究のために様々な魚を試してみた。アジの干物から取れた出汁は優秀だった。故郷を思い出すようなどこか懐かしい旨味、繊細な風味を殺さない麺を見つけるのに苦労した。

 冷たい麦茶を口に入れると、喉にさわやかな感覚が広がった。甲寿屋秘伝の薫り味噌ラーメン、そして特選アジの魚介ラーメン、この二つは文雄の店で大人気のメニューとなった。息子が友達に『俺の親父は行列のできるラーメン屋なんだぜ』と自慢するのを聞いて、誇りに思った。その味の記憶も、遠い昔に消えたように思えた。

 

「明日、廃業届を出す」

 あらかた店を畳む準備は終わっていたが、廃業届をまだ税務署に出していなかった。これを出したら自分の人生のすべてが終わってしまうような気がした。

「そうですか」と洋子はそれだけ答えた。

 

 翌日、税務署で手続きを終えた文雄は、ふらふらと足が地面につかないような気持ちで帰路についた。実感が湧かない。手続きといっても大したことがない。廃業届と青色申告取りやめ届け、その紙っぺら二枚を税務署の窓口に手渡すと、確認用の日付印を押されてそれで終わり。「お疲れ様でした」「今までご苦労でしたね」のねぎらいの一言もない。(もっともそう声をかけられたとしても困ってしまうが)淡々とした事務仕事の流れそのもので、文雄の用事は一分もかからずに達せられてしまった。

 脱力する。自分が今まで背負ってきたものが、こんなものだったのかと、そして自分がこの先どうやって生きてゆけばいいのかわからなかった。

 帰り道、自分の店に立ち寄った。もう看板は無い。《らーめん甲寿屋》百年千年万年と語り継がれるラーメンを創ろうと名付けたが、結局三十年ぽっちで閉めることになった。

 降りたシャッターに貼られた閉店廃業の張り紙。文雄はしばらくその場で佇んだ。

 

「親方ぁ!!」

 懐かしい声に振り向くと、熊谷だった。以前にも増してずんぐりとした体で走ってきて、汗を白シャツで拭きながらぜえぜえ言っていた。五年前まで、熊谷を弟子にとっていた。その後熊谷は独立して、自分の店を持ったと聞いている。

「熊、店はどうした店は」

「へえ、お陰さまでぼちぼち……」

「そうじゃない。こんな昼間から空けてきたのかと訊いてるんだ」

「だって親方が……」

「馬鹿もん。くだらない理由で顔を見せる暇があったら、すぐに店に戻れ」

 親方、と呟いて、熊谷は目を真っ赤に充血させている。

「すんません、俺、親方のこと何も知らなくて」

 熊谷はもう泣き崩れていて、その場でわんわん叫びだしそうだった。洋子が余計なことを言ったのか。決して誰にも言うなと口止めしておいたのに。

「泣くな。みっともない。誰にでも、引き潮時ってもんがある」

 文雄は自分が泣き出したいくらいだった。

 ふと、ある考えが頭をよぎった。

 まだ金庫にしまってある秘伝のレシピ。あれを熊谷に託せば、自分の味はこれからも受け継がれるのでは――。いや、駄目だ。それはラーメン作りに命を懸ける男への冒涜となる。

「熊は熊の道をゆけ。俺は俺の道をゆく。それだけの話だ」

 文雄は熊谷の大きな肩をがしりと掴み、自分の道を進めと励ました。それはまるで文雄自身に言い聞かせる言葉のように。

 熊谷と別れ、家の玄関をくぐると「おじいちゃーん」と孫娘の風香が飛びついてきた。孫が遊びに来ているとは知らず、文雄は驚いた。

 よしよし大きくなったなと頭をなでていると、洋子が出てきた。

「隆史が来てるのか?」

「ええあの子ったら、突然帰ってくるんですから。連絡くらいくれればいいのに」

 隆史は今年で二十四になる息子だった。東京でコンピューターの仕事に就いているのだとか。息子が学生時代に結婚をしたので、文雄にはもう三歳になる孫娘ができてしまった。

「親父、帰ったんだ」

 隆史も廊下に出てくる。パパー!と声を上げて、風香は隆史の方に行ってしまった。

「会社はどうしたんだ、クビか?」

「縁起でもないこと言わないでくれよ。有給休暇だよ。お盆期間が忙しくて休めないから、代わりに時期をずらして取らされたわけ」

「よくわからんが、大丈夫だろうな。ブラックなんとかとか言うのが増えてるらしいぞ」

 隆史は曖昧に微笑んだ。風香がつまんないー!と言うので、隆史は風香を抱き上げて、居間の方へと姿を消した。

 

 文雄はお茶の間で、畳の上にあぐらをかいている。洋子が出してくれたほうじ茶を啜り、せんべいをかじった。この頃は食べるときに、音に集中してしまう。ガリッガリッという低い音が、頭に響く。

「隆史は大丈夫なのか」

「さあ。でも楽しいみたいですよ。お給料も上がったとかで」

 洋子が答える。彼女は最近ハマったらしいクロスワードパズルを解いていた。赤い老眼鏡で熱心にパズル雑誌を覗き込んでいる。

「うーん……」

 人生は人それぞれか。余計な干渉をするのも良くないと文雄は結論づけた。熊谷の姿がふと脳裏に浮かんだ。

「おじいちゃーん、あげるー!」

 風香がやってきて、文雄にアイスキャンデーの半分を差し出した。(そのアイスは真ん中で縦半分に割って二人で食べられるタイプのものだった)洋子が「おじいちゃんはアイス食べないのよ」と言ったが、文雄はそれを受け取った。風香の手にはもう半分のアイスが握られていて、おそろいね!と喜んでいた。

 そのアイスは淡い緑色をしていた。初めて見るアイスだった。文雄は一口齧って、しゃくしゃくと噛む。夏の日に涼しい、さわやかで透明な喉越し。

「ほぅ、ふうちゃんは抹茶が好きなのか」

 風香は意味が理解できなかったらしく、しばらく首を傾げて「きらーい」と言った。

 文雄が笑って「じゃあ、ふうちゃんのアイスも貰っちゃおうかな」と言うと、やー!と悲鳴を上げて逃げていった。

「ははは、かわいい年頃だな」

「あなた……」

 洋子は何かを言いたそうにしていた。

 

 隆史が呼ぶので、二階の部屋に行ってみると、机の上に一台の小型コンピューターが置かれていた。

「プレゼントだよ。親父、こないだ電話したときパソコンやりたいって言ってたからさ」

 文雄は、紙のように薄い画面を感心して眺める。ためしにボタンをひとつ押すと、色鮮やかな四角い箱が画面にぽっと灯った。とても自分が使いこなせるようになれるとは思えないが、文雄は純粋に、目の前に映る綺麗な風景に心惹かれた。

「休み中に使い方教えるからさ。元気だしてよ。母さんも毎晩心配で眠れないって、だから俺が今日駆けつけてきたんだよ」

「まさか……」

 文雄はここ最近は、むしろ明るく振舞っていたつもりだった。全然隠し切れていなかったということか。

 それから日が暮れるまで、文雄は隆史からパソコンの使い方を教わった。ワープロで文章が自由に打てるようになると、達成感があった。これで自分の半生を、自伝を書いてみたいなという気持ちが膨らんだ。いや恥ずかしいかな。まあいい、新しいことを始めるというのは、悪い気分ではなかった。

「これが、隆史のやってる仕事なんだな」

 文雄が感慨深げに言うと、隆史は少しだけ間を置いて「まあね」と答えた。

 

 夜、夕食を終えて、縁側で涼んでいると、洋子がスイカを持ってきた。風香が「メロンがいい」と駄々をこねる。顔をふくらませる孫を眺めて、文雄は微笑む。欲があるのはいい。欲は生きる力だ。

 それから縁側から足を投げ出して、星を眺めた。自分はこれから何がやりたいのだろう、と思った。

 風香が隣に座ったので、文雄は聞いてみた。

「ふうちゃんは大きくなったら何になりたいのかな」

「ふうはねー、パティシエになるの。ケーキ作ってー、おじいちゃんに食べさせてあげる」

 文雄は胸が詰まった。涙を見せないようなるべく空を見上げて、風香を抱き寄せた。頭をよしよしと撫でた。風香は顔をうずめて喜んでいる。

「風香はいい子ですよ」

 洋子が言った。

「ああ……、長生きしないとな」

 文雄は強く誓った。風香がお嫁に入るまでは生きていようと。まだまだ、人生は半分なのだ。楽しみなことがいくらでもあるではないか。

 味がわからない。自分が味覚障害になったと知ったとき、何もかもに絶望し、すべてを失ったと感じた。けれど、自分にはまだ大切な生きる理由があるではないか。洋子、隆史、風香、それに熊谷もいる。そう簡単に死ねるものか。

「あたりまえです」

 七月の空に、星が輝いていた。

 

(了)

 

 この記事は、

【第14回】短編小説の集いのお知らせと募集要項 - 短編小説の集い「のべらっくす」

 の参加作品です。(約4,200文字、テーマは「食」)11月3日深夜が〆切で、ものすごくぎりぎりな時間の投稿となってしまってすみません。とても悩んだ作品ですが、書くことができて良かったです。

 他の参加者の方の作品は

 こちらから読むことができます。

 

(終わり)

(謝辞)『タロットプロット』頂いたご意見へのお礼と、今後の改善案について

 先日、弊サイト『タロットプロット』をプレゼン発表する機会があり、多くの方々から貴重なご意見をいただきました。今後サイトをどのように改善すれば良いのか、またWebサイト設計で何に気をつけるべきなのか、大変勉強になりました。

 本当にありがとうございました。頂いたアドバイスは必ず、今後の改善に繋げます。

 以下では、皆さまから頂いたご意見をご紹介し、今後タロットプロットをどのように改善していくかについてお話できればと思います。

1.デザイン面

 デザイン面では非常に多くのツッコミを頂きました。要約すると「デザインはとにかくまずいので、何とかするべき」私もこの件は重く受け止めていまして、早急にウェブデザインの再設計に取り掛かる予定です。

デザインに関するご指摘

Q.トップページのメインビジュアルが、怪しいサイトのようになっていて、使いづらい。初めて訪れる人は有料サービスだと思ってしまうのではないか?

Q.色を使いすぎている。色が多すぎて見づらくなっている。配色に統一性を持たせるべきである。

Q.文字大小のメリハリがなく、読みづらい箇所がある。文字のジャンプ率を意識すべき。

デザインの反省点

 トップページのメインビジュアル、および配色設計については、私も失敗したなと感じております。

 このようにして眺めると……、たしかに。デザイン設計時点で気がつくべきでした。

 すごく極端な例ですが、初心者がやってしまいがちな悪例として

 みたいなロゴを作ってしまう。私も「ははは、さすがにここまでダサいのは作らんやろ」と笑っていたものの、いやはや……反省します。

今後の改善案

 デザインをゼロから再構築し、中身のコンテンツも含めて大規模アップデートをする予定です。やはり「小説のプロットを占う」サービスなので、白色ベースですっきりとまとまるようなデザインに改善したいです。

 参考サイトとしては、小説家になろうが挙げられます。

 シンプルでとても見やすく、安心感もある。また、無彩色ベースであれば、このブログ「ときまき!」に似せても面白いかなと考えています。

(我ながら気に入っているデザイン)

2.技術面

 技術面でもさまざまなご指摘ご要望をいただきました。現状は、JavaScriptでカードがランダムに引けるだけなのですが、今後さらに機能は拡充させていきたいです。

機能、システム等に関するご指摘

Q.占い結果の保存について。現状はユーザーにテキストエリアから「ctrl+C」でコピーさせる方式を採っているが、これは不便だ。せめてボタンクリックひとつで、クリップボードにコピーできるようにすべき。とくに、スマホ版。コピー用の「ボタン」は用意したほうが望ましい。

Q.PHPで占い結果ページそのものを保存させ、診断結果をツイッターで拡散できるような仕組み(多くの占いサイトがこれを実現している)が欲しい。

Q.レスポンシブではないため、今後、解説記事コンテンツを拡充するのであればメンテナンス性が悪いように感じる。

Q.カードを引く枚数が多いとき、いちいちマウスでクリックするのが面倒。例えば一括でカードを展開して、ユーザーがすぐに占い結果を見れるような配慮が欲しい。

機能、システムでの反省点

 ユーザビリティ上これはさすがに宜しくないとご指摘があったのは、占い結果の保存方法です。

 現状、結果保存用のコピーフィールドは上のようになっており、ユーザーは「ctrl+C」か右クリックで保存するしか選択肢がありません。(スマホ版も同様)

 これは確かに不便であり、早急に直すべき部分です。多くのサイトでは、ボタンをワンクリックするだけでコピーができる機能を取り入れています。とくにスマホでは右クリックやキーボードショートカットが使いづらいため「コピー用ボタン」が必須です。クリップボード制御は思いのほか敷居が高かったため導入を見送っていたのですが、この機会に勉強しようと思います。

 その他の点についても、現在見直しを行っています。占い結果専用のページを作って、ツイッターで呟けるシステムはやはり欲しいところで「ツイッター診断メーカー」をはじめ、このようなシステムはアクセス向上のためには欠かせないものとなっています。

3.コンテンツ面

 最も重要なのは中身のコンテンツであり、コンテンツを第一に考えて、それを生かせるデザインや技術を作っていく必要があります。

コンテンツに関するご指摘

Q.現状では「ネタ出しツール」くらいにはなるかもしれないが「プロット作成支援」を謳うには、まだ深みが足りない。

Q.恋愛小説、SF、ミステリーなど、書くジャンルに合わせた占いコンテンツを作って欲しい。

Q.占い結果で、例えば人物設定を行うときには「どのような人物か」というキーワードだけが欲しい。現状は「行動/状態/性質/人物像」などを示すキーワードが全部一緒くたに表示されてしまっており、解釈が難しい。

Q.箇条書きでキーワードを羅列するのではなく、文章形式で占い結果が読みたい

Q.現状は「ポジティブな意味のカード」と「ネガティブな意味のカード」とが半々に存在し、ランダムに出てくる。しかし例えば《主人公の願望》だとか《物語の結末》の項目にネガティブな意味のカードが出ると、困ってしまう。ユーザーが事前に、ハッピーエンドにするかバッドエンドにするかを決めて、それに応じて出すカードを変えられないだろうか。

Q.インプットではなく、アウトプットの支援システムが欲しい。例えば「キャラ設定シート」や「物語設計シート」など、問いに答えて項目を埋めるだけで簡単にプロットが生成できるような仕組みがあると良い。

Q.カテゴリ分けが、現状は「テーマ」「ストーリー」「キャラクター」「ペルソナ」「ワールド」とあるが、わかりづらい。

(改善予定→「ネタ出し」「物語設計」「キャラ設定」「世界観設定」と、より一般的に用いられる言葉でカテゴリを再編成する)

Q.ユーザーが自作のプロットを投稿して、評価し合えるような投稿サービスを作って欲しい。

 などなど、たくさんの声をいただきました。頑張ります!

 個人運営のサイトのメリットは、時間をかけていくらでも修正&バージョンアップを行えることです。上記に挙げた機能すべてを実装することは難しいですが、可能な限り実現させ、より使いやすいサイトに発展させていこうと思います。

 タロットプロットに関するご意見ご感想を募集しています。上のメールフォームから送ってくださると嬉しいです。匿名でもOKです。

最後に

 タロットプロットは完全な趣味サイトで、(そのうち入れるかもしれませんが)現時点ではAdsense広告等は入れずマネタイズは考えておりません。

 では、私がタロットプロットを作る目的、メリット、制作動機は何なのか?という質問に正直に答えるとするならば

「タロットプロットで作ったプロットで新人賞を突破したい」

 もう本当に、この一言に尽きます。俺が新人賞を受賞する、ただそのためだけにタロットプロットを作ったんだ!と言っても過言ではないです。

 ゆえに、私自身が一番熱心なタロットプロットユーザーであるという自負はあるのですが、贔屓目に見ても、現状のサイトは使いづらい。これではまだ、満足の行くプロットは作れない。何とかしなければ、もっと使いやすいサイトにしたい、と思います。

 ありがとうございました!

(終わり)

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誰かが私を変えてくれるのを待っている

 今月はあと六万文字書かなければ〆切に間に合わない。急がなければと思っているのに、筆が進まない。進捗が硬直している。パソコンの画面を見つめる私は、まるでメデューサの眼光に当てられた石像のように動けない。いやいや、今の比喩はよろしくない。レトリックには、必然性がなくては。格好をつけるために意味もなくいい加減な比喩を使うと、逆効果だ。料理の調味料は、少ない分には薄味でまだ食べられるが、多過ぎると全体を駄目にしてとても食えなくなる。過ぎたるは及ばざるが如し、なのだ。あ、また余計な比喩で説明してしまった。ぽかぽか、いけない奴め。

 などと悪戦苦闘して、本当に書けない。思考が止まってしまった。頭からは、ぽわわ~~~んという気の抜けた擬音語が蒸発している。ぼんやりしてきて、何もかもがどうでもよくなってしまう。

 原稿進まない。集中力がもたない。とりとめもなくネットサーフィンをして、気がつけば何時間も経っている。最近は増田(はてな匿名ダイアリーの俗称)ウォッチが日課だ。注目されそうな増田にブックマして気の利いた大喜利コメントを書いて星を集めたりすると、なんだか昔スーパーマリオで必死になってコインを全部取ってやろう頑張っていた子供時代を思い出す。いいよね、はてなスター。夜道でふと顔を上げて、星々が輝いているのを見ると「わあい、はてなスターだぁ」と思ってしまって、いよいよはてな中毒を発症している。

 増田は書くのも好きで、自慢だが(自慢なのかな)こないだ100はてブ以上獲得してホッテントリ入りを果たした。たいてい、ホッテントリ入りしたエントリーには手斧が飛んでくるものだが、私の記事は思いのほか好評だったようで「増田大先生渾身の一作!」「これぞ増田文学の真骨頂!!」「軽快なレトリックに清々しい読後感」「いやはや、良いものを読ませてもらいました」「狂気と混沌に満ちた素晴らしい才能」「恐ろしい恐ろしい」「プリントアウトして出版社に持って行くべき」「良い記事ですね! シェアさせていただきます!」みたいな心あたたまるブコメで溢れていて、私は感極まって今にも昇天してしまいそうだった。(ブコメ半分くらい妄想ですすみませんでした)しかし、ネットというのは案外簡単に承認欲求が満たされてしまうので、承認欲求を満たすことを目的に書いていると、すぐに書けなくなってしまうと感じた。「満たされてしまった」ら「書けなくなる」。

【問】ところで数行前に『心あたたまる』と書いたが、漢字表記するならば『心温まる』『心暖まる』どちらが正しいだろうか。

「温まる」は、モノの温度について述べるときに用いる。料理を温める、とか、冷えた手を温めるとか。あるいは人の感情にも使えるので、温かい視線、温かいもてなし、温情など。

「暖まる」は、気温や気候について述べる印象が強い。ストーブで部屋を暖める、春は暖かい、暖かい色合いの壁紙、暖かい炬燵、云々。

 では、心の場合はどちらなのか。温かい心なのか、暖かい心なのか。

 調べてみると、どちらでも良かったらしい。うん、散々悩んだ挙句、解答を見たらどっちでもいいよ的な慣用句はわりと多くて、がっくりくる。

 小学館日本国語大辞典と広辞苑では「心暖まる」、明鏡国語辞典では「心温まる」だ。念のため青空文庫で小説家たちがどちらを選んでいるかを調べてみたが、どちらともあった。ちなみに日本語大シソーラス類語検索辞典によると「温まる心」は「あたたまる」ではなくて「ぬくまる」と読ませる場合もあるそうだ。

 そんなこんなで、豆しばとトリビアの泉もびっくりな雑学をリサーチしていたら、時計の短針が深夜零時に近づいていて肝心の原稿はちっとも進んでいなかった。

 はてなブログの新着エントリーのページでF5キーを連打してみても、はてなブックマークのランキングを行ったり来たりしてみても、ただ時間が過ぎゆくだけで、自分はこんなことをしている場合じゃないのにと理性は悲鳴をあげている。けれどネットサーフィンがやめられない止まらない。ああ、私は「本気をだすタイミング」を見つけ損なったんだなと思った。

 それから、ツイッターのタイムラインをどこまでも遡ってみたり、ニコニコ静画で漫画を読み漁ったり、外国為替のチャートを眺めたり、回転椅子でくるくる回ったり、ボールペンの芯を出したり引っ込めたり、新聞紙で折り鶴を作ってみたり、いろんなことをした。新聞紙の折り紙は傑作だったので玄関に飾った。ほんとうに、この忙しいときに自分は何をやっているのだろう。けれど無意味な行為がやめられない。時刻は深夜二時を回っていて「仕方ない、明日から頑張るか」と布団に入ってから(ああなんで今日も頑張れなかったのだろう)と激しく後悔する。

 他に為すべきことがたくさんあるときに、ネットサーフィンでぐだぐだと過越してしまう。けれど、きっと私は何らかの「情報」を求めてWebサイト巡りをしているはずなのだ。その「情報」さえ見つければ、私は新しい私に変われるはずなのだ。やる気と本気に満ち満ちた、私に。だからネットサーフィンがやめられない。

「シンデレラ・コンプレックスだね。キミはネットのなかに、自分を変えてくれる魔法使いのおばあさんをさがしているんだ」
 だねだね、と育てている観葉植物のパキラが言った。設定上は僕っ子のショタだが、育ちすぎてしまって背丈が1メートル近くになった彼は、かわいくない。
「誰かが《私》を変えてくれるのを待っているんだね」
 そうなのだろうか。
 誰かが、私を変えてくれるのを待っている。人でなくても構わない。自分が変われるきっかけさえあれば、それで。今この瞬間に、玄関のチャイムを宗教勧誘の人が鳴らして「あなたも○○教に入って人生を変えてみませんか」と囁いたなら、きっと私の心は揺れるだろう。
 シンデレラに限らない。誰にでも変身願望はある。ウルトラマンだって、仮面ライダーだって、最初から強いわけではない。「変身」で強くなる。変身ッ!というスイッチによって変わることが重要なのだ。変身願望が満たされることに大きな意味がある。
 私も変身したい。どこかに変身ベルト落ちてないかな。
 たった三分間だけでいい。自分が自分の思い浮かべる理想の姿へと変わり、本気で全力でその僅かな瞬間を生きることができたのならば、きっとその日は満足して眠りにつけるはずなのだ。

 私は砂時計をひっくり返した。

 

(終わり)

「KADOKAWA×はてな」の新小説投稿サイト来たああああ!!!

 つ、ついに「はてな×KADOKAWA」の小説投稿サイトが来たあああああ!!!!

 うちはこのワクワクの衝動を抑えられへん。煮えたぎる血液、迸る心臓の鼓動が宇宙の果てまでダイナマイト!!!やで。はてな創作クラスタの新たなる幕開けや。これはもう書くしかあらへんな。賞金総額はなんと700万円!!しかも大賞作品は「書籍化決定!!」 うちが《はてな小説家》としてデビューを果たす日が来ることを思うと、胸が高鳴るな。ウェヒヒヒヒッヒヒヒヒヒ……!!!

 も、もう……はしゃぎ過ぎです。取らぬ狸の皮算用してる暇があったら原稿書いてくださいよ。KADOKAWAとはてなが組んで小説投稿サイトを作ることには私もびっくりしました。「小説家になろう」「エブリスタ」「魔法のiらんど」など、すでに大手の小説投稿サイトがあるなかで、どのような差別化戦略を行うのか、気になるところです。

 KADOKAWA×はてなの「第1回 Web小説コンテスト」では7つのカテゴリに分けて原稿の募集をかける予定のようですね。

  1. ファンタジー
  2. SF
  3. ホラー
  4. 現代ドラマ
  5. 現代アクション
  6. 恋愛・ラブコメ
  7. ミステリー

 なかでも「現代ドラマ」「現代アクション」の2カテゴリは面白いですね。他の新人賞ではあまり見かけない項目です。

 ファンタジーに属する『異世界転生/チートハーレム』『MMORPG』、ホラーに属する『デスゲーム』系作品は、ネット小説から書籍化し、そしてアニメ化・映画化で大ヒットした事例も見られます。この辺りのカテゴリは激戦区となるかもしれません。

 SFやミステリーも楽しみですよね。小説のカテゴリってじつのところすごく曖昧※ですし「このカテゴリはこうだ!」と縛られる必要は全く無いです。

(※例『恋愛×ミステリー』『ホラー×SF』)

 賞の投稿カテゴリを7つも用意したことは評価されるべきポイントだと思います。カテゴリが多ければ、投稿作品もうまい具合にバラけます。結果的に『多様な作品』が読者の目に届きやすくなる。書き手も自分の書きたい物語を追求することができる。

 ちょっと待って!!

 はてな小説の最高峰『増田文学』のカテゴリがないやん!!

【※参考 2015年前半期 増田文学大賞(はてな匿名ダイアリー) - ときまき! 】

 そ、それは『はてな匿名ダイアリー』の方でやってください。(匿名でなければ増田じゃありませんし)カテゴリ的には『現代ドラマ』がマッチするのかなぁと思います。しかし匿名ダイアリーには、時折とんでもなく優れた筆力を持つ書き手が現れるもので、驚かされます。普段増田で書いている書き手さんが、小説投稿サイトの方でも活躍できるのなら私としても嬉しい限りです。

 もしかしたら、これをきっかけに初めてネットで連載小説を始めるよー!という方もいらっしゃるかもしれません。最後に、私の経験則で大変恐縮ですが、ネットで連載小説を書くときのポイントを列挙して終わりたいと思います。

ネット連載小説を書くコツ

1.あらかじめ原稿は完結させておく

「話は連載しながらその都度考えていけばいいや」は途中でストーリーが破綻して詰む可能性が高いです。連載開始時点で、すでに原稿は完成させておきたい。完結まで行けなくても10話先分くらいのストックは貯めておきたいものです。ストックないと連載続けるのが大変です。

2.更新頻度は高い方がいい

 3日に1回、遅くとも1周間に1回くらいの更新ペースは保ちたい。毎日更新が理想です。

 書き溜めていなくて2週間に1回くらいの更新だと、読者だけでなく書き手であるはずの自分までもがストーリーを忘れてしまう。間を空けてしまうと、執筆再開するときに多くのエネルギーが必要となります。

3.章や各話にタイトルをつける

 つけた方が読者にとっては親切。これは迷子にならないためです。

 タイトルが無いと「あれっ、この作品57話まで読んだんだっけ、それとも58話かな。あのシーンもう一度読み直したいんだけど、えーっと23話だったかなぁ……」みたいに迷ってしまう。

 章タイトルのみで、各話は話数番号表記のパターンでも良いでしょう。私も、魔法のiらんど投稿の際はこの方式を採用していました。小説家になろうで連載していた頃は、各章各話にそれぞれタイトルをつけていました。この辺はお好みです。章タイトルなり各話タイトルなり、何らかの分かりやすい目印があると便利ということです。

4.作品タイトルとあらすじが命

 読者はタイトルとあらすじで読むか否かを判断します。あらすじが良い作品は中身も良い傾向にあるといえます。タイトルは煽らず釣らず、物語にマッチしたものにするのがベターです。

5.作者と作品は切り離される

 はてなブックマークのブコメ欄ではないですが、厳しいコメントや作品への辛辣な批判は、小説を連載していても寄せられます。このときに批判を『自分自身』への批判として受け止めると、メンタルが持たないです。

 あくまで読者が寄せるのは(作者とは切り離された)『作品』への感想であり、批判は作品改善のための参考材料として、淡々と冷静に受け止める……のが理想。

 小説投稿サイトとはてブが連携すれば、人気上位にあがってきた作品がブコメでフルボッコに叩かれるみたいな地獄絵図も予想でき、恐ろしい恐ろしい……。心(筆)を折られてしまわないように気をしっかり持ちましょう。

 

 以上、新小説投稿サイトに関する雑感と、ネット連載小説についての小ネタでした。

(おわり)

瞳に泳ぐ、魚はキミの……(第13回 短編小説の集い)

この記事は

の参加作品です。お題は「魚」

原稿は約4,600文字(字数制限ぎりぎりになってしまった……)

投稿は夏の納涼フェスティバル以来の二回目となります。

【第13回】短編小説の集い 投稿作品一覧 - 短編小説の集い「のべらっくす」

参加作品一覧はここから読むことができます。

 

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――――――

――――――――

 

 

「ほら、もっと顔をよく見せてごらん」

 タカシが優しく、しかし真剣味を帯びた声でささやく。タカシとの身長差は二十センチ以上あり、ユキは顔を上げて背伸びをしなければならなかった。ユキは十六年生きてきて、まだキスをしたことがない。夢だったのに。この瞬間が、自分の”初めて”になることを自覚していた。

 海に沈んでゆく夕陽が、見つめ合う二人を茜色に染める。砂浜を踏みしめる。ユキの腕が、タカシの胸元へと伸びる。二人はしばらくの間、時が止まったかのように動かなかった。

 やがてタカシは荒く息を吐いて、身体をもたれかけるようにして大きな手でユキの肩を掴んだ。

「もっとよく顔を! 顔を!」

 タカシが目を見開いて、顔を覗き込む。まるで宝探しに命を懸けてきた冒険家が、土の奥深くに隠された遺跡を発見したかのような、あまりにも情熱的な視線だった。

 ユキは耐えられずまぶたを閉じた。

「違う! 目を開けるんだ、瞳が……見たい……」

 驚いてまぶたを開く。もう鼻と鼻とがくっつきそうな距離だった。食い入るように、彼は爛々とした目を近づける。タカシはうっとりした声で言った。

「きれいだよ……」

 その一言を最後に、タカシは息絶えた。崩れ落ちた砂浜に、血の海が広がる。

 

 ユキは”初めて”人間を殺し、自分が人とキスをする日は永遠に訪れないのだと悟った。

 陽が海に呑み込まれ夜が空を覆うまで、ずっとユキは泣き続けた。美しい声で。

 暗い波が、悲劇的な結末を待ち焦がれていたかのように、タカシの亡骸を海の底へとさらっていった。

 

――――――――

――――――

――――

 

 その日、タカシはお見合いの帰りで、うんざりしていた。いつものことだが、親がはやく結婚をしろとうるさい。勝手に見合いの予定を入れて、相手の女性の顔写真とプロフィールが載ったカタログを押し付けてくる。彼女を彩るのは『学歴』『出身』『財閥』といった無機質的な記号に過ぎず、それは彼女だけでなくタカシ自身にも同じことが言えた。

 誰かを心から愛して、愛される生活を夢見ていた。同時に、親の影響がある限り、自分にふつうの恋愛が不可能であることも知っていた。

 

 疲れきった顔で家に帰った。タカシを待ち受けていたのはしかし、一糸まとわぬ姿の少女だった。知らない美少女が、自分の家のリビングになぜか横たわっている。疑問よりも先に、タカシは直感的な運命を感じた。

 タカシは高層マンションの一室に暮らしている。部屋にはオートロックの電子錠がかかっており、静脈による生体認証がなければ入ることができない。窓は二重窓であり、そもそも三十二階ではベランダからよじ登って侵入することは不可能だ。

 完全なる密室を乗り越え、全裸の少女が今ここに現れた。これを運命と呼べないのならば、呼ぶべきは名探偵であろう。タカシはじつのところ警察に連絡しようかどうか迷った。だが、状況的にどう考えても自分が不利になる。だからあきらめた、いや、少女を自分のものにしたかった。

 

 タカシは外套をソファに脱ぎ捨てて、仰向けに寝ている少女の身体を観察する。肌は白く、生まれてから陽にあたったことが一度もないように透き通っている。最近流行りの全身脱毛だろうか、産毛のひとつも生えていない。興奮を押し殺して肌に触れてみると、シルクの布を撫でたときのように指が滑った。

 どういうわけか、長い髪だけが濡れている。勝手にシャワーを浴びたのだろうか。まぶたは安らかに閉じており、夢を見ているようだ、流線型を描く控えめな胸が静かに上下に揺れていた。

 タカシは我慢がならなくなって、少女のすらりと伸びた脚に、手を触れた。

 刹那――。

 少女の体がびくんと飛び跳ねて、起き上がる。少女は苦痛に満ちた目を見開いて、三角座りをするように脚を抱えてうずくまる。口を開けて何か話そうとしているようだったが、声は一言も発せられなかった。

「キミは、誰なんだい……」

 タカシは行き場所を失った自分の右腕を気まずそうに背中に隠して、少女に訊いた。

 海のような青い瞳と、目が合った。

 少女の瞳のなかで、魚が泳いでいた。魚は視線の橋を渡ってタカシの深層意識へ潜り込み、魔法のように彼の眠っていた感情を呼び覚ました。魚に魅了される。

「美しい……瞳だ……」

 タカシは、恋に落ちた。

 

 二人はともに暮らし始めた。

 少女には名前がなく、声がなく、さらに足が不自由だった。

 タカシは彼女に名前を授けた。《ユキ》雪のように白く美しい――けれど、いつか溶けて消えていってしまいそうな儚い少女に。

  衣服と、宝石と、食べ物と、本と、それから車いすを。外に出なくても満たされて過ごせるよう、ありったけのものを。(しかしユキは本が読めなかった。文字を読むことも書くこともできないのだった)

 

「ユキ、綺麗だね。キミの瞳には、魚が泳いでいるんだよ」

 言われて、ユキは嬉しそうに微笑んで、頷くだけである。彼女が側にいるだけで満足だった。

 否、性的なことを期待していなかったといえば嘘になる。だがユキは下半身に触れられるとひどく痛がるのだった。激痛が走るようだ。タカシは彼女の苦しむ顔を見るくらいであれば自分が死んでしまう方がマシだと思った。性的な欲求を封じ込めることを誓った。 

 ユキは部屋から一歩も出なかった。部屋のなかのセカイだけで満たされていた。タカシも守るべき恋人のために、仕事にも精を出すようになった。というのも、親が愛想を尽かしかけている。結婚をなかなか決めようとしないタカシに。社長の座は、弟に譲り渡すつもりらしい、という噂も社内で流れている。内心焦っていた。

 

 同居から一月程経ったある休日、二人で一五〇インチのプラズマテレビで番組を見ていると、海外の水族館の特集が始まった。大水槽を魚の群れが泳いでいる。ふと隣を見ると、ユキが泣いていた。少女は何かを呟いた。タカシにはそれが「お母さん」と言ったように感じられた。どこから来たのかわからない少女は、故郷に帰りたがっていた。

 タカシがアクアテラリウムを買ってきて熱帯魚を泳がせてやると、気に入ったようだ。ユキは一日中、水槽に見入っていた。それから水槽を眺めるのが彼女の日課になった。

 

 ユキとの穏やかで幸せな日々が続き、また数ヶ月が経った。タカシの高齢の父親が、持病を悪化させ、急遽跡継ぎが選ばれることとなる。タカシは社長を継ぐ交換条件として、父親の薦める縁談を決めた。苦渋の決断だったが、どうしても必要なイニシエーションだった。

 さすがに戸籍もない出生不明のユキとは籍を入れられない。親の決めた相手で頷くしかなかった。形式だけの婚姻で構わない。向こうも財産目当てなのだ。

 跡継ぎ争いのごたごたが落ち着けば、ユキとふたりきりで安らかに暮らそう。誰にも文句は言わせまい。すべてがうまく行くように感じられた。

 タカシは家に帰ると、ユキにこのことを話した。

「誤解しないでほしい。不倫だとか内縁の妻だとか、そういう話じゃあない。一番愛しているのはキミだ。これからも一緒にいてほしい」

 しかしユキは、予想外にショックを受けたようだった。布団を頭からかぶって塞ぎこみ、部屋に閉じこもる。

 「ユキ、ユキ!!」

 呼んでも部屋の戸は開かず、タカシも頭を冷やさなければとその日はひとりで眠りについた。

 翌朝、マンションから忽然とユキの姿が消えた。タカシは部屋中を探しまわり、玄関のドアに取り付けられている防犯カメラもチェックしたが、失踪したユキの痕跡は見つからなかった。

 タカシが絶望にむさび泣き、挙句の果てには自殺用ロープを買う寸前だった。

 ユキは唐突に、何事も無かったかのように(生体認証付きオートロックをすり抜けて)部屋に戻っていた。彼女の右手には固く婚姻届が握られていた。どこで手に入れたのか。ユキはそれをタカシに突き出す。

 タカシは嬉しくて今すぐにでも彼女に抱きつきたかったが、必死にこらえてかぶりを振った。

「いや、気持ちは嬉しいさ。でも結婚はムリなんだ! いいじゃないか形式的な結婚なんて。俺達には愛があるんだから!」

 しかしユキは頭を強く横に振って、婚姻届を押し付けようとする。どれだけ説得をしようとしても、彼女は頑として言うことを聞かなかった。あれほどに無垢で素直なユキが、こんなことは初めてだった。

 何時間と押し問答が続いただろうか。

「いい加減にしろ!! なんだキミもあれか、俺の財産が目当てで近づいてきたのか? そんなに金が欲しいならいくらでもくれてやるから今すぐこの家を出て行け!!」

 カッとなって怒鳴ってしまった。すぐに後悔した。ユキは目に涙を浮かべていた。

 彼女が言葉でコミュニケーションが取れないことが、今となってはもどかしかった。ユキは声が出ないだけでなく、文字も書けないのだ。

「すまない……俺がどうかしていた」

 そっと抱きしめる。ユキの肩が震えているのがわかった。

「……わかってくれ」

 タカシは祈るように言った。

 

 縁談の方はトントン拍子に進み、やがて式をあげる前日になった。

 ユキはもう何も言ってこなくなったが、時折水槽の魚たちを眺めて、悲しそうな顔を見せるのだった。タカシにはそれが堪らなく辛い。

「心配ないさ。時がすべてを解決してくれる。これからだって一緒に暮らせるさ」

 タカシは自分に言い聞かせるように言った。

 ぽん、と優しくユキが肩を叩く。ユキは静かに微笑んで、手に持っていた雑誌の一ページを指差した。

 美しい海と、砂浜の写真が映っていた。旅行会社の広告だ。

 そうだな、うっとおしい結婚式の前に、恋人との思い出作りも悪くないか、と思う。

 

 タクシーを手配する。ユキは足が不自由だが、ゆっくりとなら歩くことができる。タカシが肩を貸してやり、ユキはマンションの外へ出た。タクシーは目の前に来ており、二人で乗り込んだ。タカシは一番近い、海が見える砂浜の名前を告げる。

 

「ユキ、もっと早くにこうして来ていれば良かったね」

 目の前には海が広がっていた。季節外れなので、海水浴客はいない。

 ユキはずっと海を眺めていた。海を隔てた遠い場所に、彼女の故郷はあるらしかった。もしもユキが本当に望むのならば、タカシは自分のすべてを捨ててでも、彼女の行きたい場所についてゆくつもりだった。

 やがて空が夕焼けに染まるまで、二人は寄り添ってずっと海を見ていた。このまま時間が止まって、セカイに永遠に閉じ込められたなら、どれほど良かっただろう。明日には結婚式があり、ユキを悲しませてしまうことが彼にはよく分かっていた。

 

「ユキ」

 タカシは恋人の名前を呼ぶ。

 彼女は振り向いて、手に隠し持っていたものをタカシに差し出す。

 それは銀色の装飾が施された、この世のものとは思えない綺麗な、綺麗な――。

 

 ――、綺麗な短剣であった。 

 ユキは短剣の刃の切っ先を、タカシの方へと向ける。

 彼女の青い瞳には、今も魚が泳いでいて、涙が溢れだしていた。

 

 タカシは一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに理解した。自分が何を愛して、何に愛されていたのかを。

 導き出された真実はしかし、タカシを心の底から満足させるものだった。自分が生きている理由に、初めて気付くことができたのだから。

 

 夕陽が海に真っ赤な幕を降ろす。波が打ち寄せ、足元の砂をさらってゆく。

「そうか、キミは人魚だったんだね」

 タカシは、そのまま笑みをたたえて、泣いている恋人の肩を抱く。

 魔女の鏡の輝きを放つ、短剣の刃が、夕焼けの赤を反射させていた。

 

 タカシはこのセカイでもっとも愛する少女の瞳に、囁いた。

「ほら、もっと顔をよく見せてごらん」

 

【了】

 


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